*もしもコムリン騒動のときにクリス君がいたら

“それ”を視界の中に収めた俺は、寝ていたところをファインダーに叩き起こされて不機嫌なままイノセンスを発動した。金属製、中々硬そうな素材で出来ている。
リナリーは寝ているし、アレンはどうやら奴に捕まってしまったらしい。がしゃんと音を立てて閉まったドアを忌々しく見る。

「エクソシスト…発見!」
「そう簡単に捕まってたまるかって」

「いいぞもっとやれ!」「壊しちゃって下さい元帥!」「壊しちゃダメー!」

切るか、壊すか。とりま落ちていた科学班お手製のカタナを手に取ると一振りして構えた。聖遺物となったそのカタナは、神の加護を得て威力がウン倍になり、どんなものも切れるようになる、らしい。
俺のイノセンス、救世主(メシア)はその名の通りチートにチートを掛けたようなハイパーチートだ。何を言っているか分からないと思うが、表現するならば勉強を一切しなくても百点毎回取ってる天才、のようなものだろうか。

まず、右足を切り落とす。

「イタイ、イタイ…!」
「痛覚無いだろお前……」
「言葉の綾ってやつだよクリス君!」

黙れコムイ。
俺は痛み(?)で床に転がっているコムリンを見て警戒を解くと、カタナを逆手に持ち替えて奴の腹の部分に左足を掛けた。動力源は脳、ならば壊してしまえばいいじゃない。

振り下ろされるカタナ、多くの声援と共にそれは吸い込まれるように   

「……え、」

嘘だろ?
コムリンは、俺の両手をあっさりと掴むと投げ飛ばす要領で体位を逆転させた。何だコイツ、今までのは演技だったとでも言うのか!

「元帥ー!」「頑張ってくださーい!」
「助けに来いよ……っ!」

コムリンは、俺の首根っこをあっさり掴むと腹の中に投げ入れようとする。

  Daath」

ダアト。隠されているが故に他とは次元を異するセフィラ。その能力は、“透明”。しかし質量的には存在しているので対アクマ戦では中々使い所が無い。

俺の体は透明となり、体を掴んでいたコムリンは突然透明になった俺に動揺して落とした。見たところカメラは熱量反応とかではなく唯のカメラなので、先程落としてしまったカタナを拾うと(聖遺物と認識されれば全て能力の対象内となるのだ)、首を狙ってカタナを振るった。


天より人に授けられた救世主


「で? 室長殿、何か一言ありませんかね?」
「ハイ、マコトニモウシワケアリマセンデシタ」
「本当にな。俺の貴重な睡眠時間を邪魔しやがって……」