「師匠は、私と出会った頃に比べると余程、今の方が人間らしい」

発言の意図を飲み込めずに眉間に皺を寄せると、ケビンはふふと面白いものを見たかのように、そう囁いて笑った。

「貴方、昔は教団に従順な、そうだな……正しく狗のようだった」
「いぬ、」

確かに、確かにそうかもしれない。否定は出来ない。

昔、俺は本当に人間としては欠陥だらけの人形のような存在だった。大元帥の指示を仰いでアクマを殺してノアと戦いイノセンスを保護する。周りも、俺さえも死なないから、と俺の身体を酷使して。

ようやく自分を人間なのだと自覚した時には、既に七十年が経過していた。

「でも、昔も私を助けてくれた」

それだけは変わらないと俺を呆れたように笑う彼も、昔と何も違った様子は無い。

  
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