壁の向こうへ、笑いながら“アレン”は吸い込まれた。その光景にアレンは手を伸ばして、ついぞ届くことは無い。

「最低だな、バク」
「戦う術のないエクソシストは唯の人間だと言ったのは貴方でしょう」
「イノセンスが無くともエクソシストは神の使途たりえる、とも言っただろ」
「……」

戦うことしか知らないのに、今更違う生き方は出来ない、という意味の言葉をアレンは発した。

「クリスさんは、戦わないんですか」

嫌悪、というよりかは疑惑の目を向けて、アレンは俺に問いかけた。その言葉に軽く笑うと益々アレンの顔は険しくなる。

「人間、一度には攻撃か防御のどちらかしか出来ない作りになってるんだよ」
「……はぁ」
「それに、戦うのは君の役目だと思っているんだがね、アレン・ウォーカー」

酷い人間だって? 褒め言葉だよ。

  
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