凡人赤司様成代 (7/19)
努力が才能に勝ることは無い。

事実として、才能は一人一つずつ平等に持つものではない。そもそも才能というのも定義が曖昧で、俺としては「人一倍優しい」という性格云々のものは違うと言わざるを得ない。逆に、自分が圧倒的に劣等感を抱いている事柄であっても客観的な、他角度からは魅力的な“才能”になるのだろう。

例として。挙げるとするならば、自分の中ではあらゆる意味で黒子テツヤという人間は初見でも非常に興味を抱ける素質を持っていた。故に俺は、彼の努力を、才能を発掘することによって、全て亡きものにしてしまったのだ。
彼が試合に出る都度思うのは。俺が、それを見抜いたのだという確信と、いつか、彼が俺を越えるかもしれない恐怖のみだった。
俺は根本から天才などでは無く、昔のまま変わらない、唯の、しがないひとりの人間だと気付いたのは、いつのことだっただろうか。

もし、俺が前世の通りにただの凡人で在れたならば。もしくは、“赤司征十朗”らしく在れたならば。
俺は、彼らに会う度に恐怖を抱くことも無く、唯ひたすらに勝利を願うひとりの少年で在れたのだろうか。

今は、知る由も無いけれど、ね。
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