そのまま首位で到着する。先輩からタオルを渡されて汗を拭くと、知らない人達が話しかけてきた。首からカメラを提げているので取材か何かだろうか?



「もしかして君、“幸村精市”じゃないか?」

「え? ああ、そうですけど」



頷くと、その人は「まさかとは思ったが……」と意味深に呟いていた。そして俺の顔を凝視する。

俺が困ったように笑うと、その人ははっと気が付いたようで名刺を渡してくれた。



「ああ失礼、俺達は月刊プロテニスの井上だ。今日は取材に来ていたんだ」

「取材の人ですか? よく俺が分りましたね」



首を傾げると、井上さんは驚いたように言った。



「俺の知り合いで君の名前を知らない人はいないぞ! なんたって公式戦では1ポイントでさえも落としていない。最近では“神の子”と呼ばれているじゃないか!」

「そ、そうなんですか……俺、あんまり雑誌とか読まないんで知りませんでした」



神の子って。キリスト教か。俺はイエス・キリストか。

井上さんは興奮して、俺を置き去りにして喋っている。



「それにしても今年の立海の一年は凄いな。真田君がいると思ったら君もだなんて」

「いえ、そんな――「ははは、ありがとうございますー」



言葉を遮られて、俺は後ろを振り向いた。錦先輩だ。

そういえば、部活の途中だったじゃないか。
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