“分かっている”だって? そんなことあるはずが無い、そう思いたかったけれど最近の真田はやたらと俺の体調を気遣っているようだった。まさか、まさかまさかまさかまさか、全て知っていたから? だって最近は一緒に帰らないようにしていたし、なるべく赤也とか気付かなさそうな人の近くに居るようにしていたし、

このまま真田の手の内に居たら、近いうちに病院へ運ばれて俺は自由を失ってしまう。自分の身体だから、きっと今すぐ入院しても来年までに戻れないことはよく分かっていた。下手したら夏まで、或いはずっと本気でテニスなんて出来ないかもしれない。だから俺は“もしかしたら来年の夏までに復帰できる可能性”よりも“限界まで身体を保つこと”を優先させた。俺だってよく考えた結果なんだから文句は言わせない。この痛みだって山を越えればきっと直ぐに治まる。……そう、思っていたのに。

真田はラケットを監督席の柳に預けて俺の傍まで歩いた。険しい顔、かと思いきや案外普通にしている。けれどこれ以上真田を見ていると決心が揺らぎそうだったので俺はしゃがみ込んで蹲った。



「“分かってる”って、それを俺に言ってどうしようて言うの」

「……お前は誤解している。俺は、例えお前がテニスが出来なくなったとしても親友として傍に居るだろう」

「嘘、そのうち嫌気がさしていなくなるに決まってる」



だって俺テニスが無かったらただの駄々捏ねる子供だもんね。言うと、俺の頭上で真田はもう一度、呆れたように溜息を吐いた。
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