十二月、まだジャージで凌げるほどの寒さだが率先して運動をしようとは思わない。真田や蓮二は一年生の面倒を見ているし、ジャッカルと丸井はダブルスの練習。仁王は……柳生とこそこそしているので後でとっちめに行こう。

ふと強い風が吹いて俺も肩のジャージを落としそうになる。手でジャージを押さえると、前方から真田が歩いて来た。どうやら試合形式での練習らしく、気が付けばレギュラーを始めとする奴らがコートでシングルスの試合をしていた。



「幸村、俺と試合だ」

「……いやだ」

「ならば不戦勝で俺の勝ちだな」

「……それもいやだ」



真田は我侭だな、と呟くと溜息を吐いてならば代わりに蓮二と試合をしてくる、と言い残して踵を返した。俺はというとその後姿をぼんやりと見つめている。

ではなく。

奴は今「代わりに」と言ったか。俺の代わりが蓮二だって? お前も中々言うようになったじゃないか。だがしかし俺の代わりは絶対に居ないし決して負けもしない。



「真田」



一言静かに言っただけだったのに、真田は俺を振り返る。確かに彼の目には、いつぞやと変わらない炎が宿っていた。
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