「――なっ!?」

玄関から聞こえてきたのは白石の切羽詰った声だった。

「し、白石……? どちらさん?」

しーん。

何故かそれきり、玄関の方から物音は一切しなくなった。白石が外へ出たのかとも思ったが、そんな様子でも無かったはずだし、まず普通は一言くらい声を掛けるだろう。流石に不審に思って謙也もコタツから立ち上がった。おそるおそる、一歩ずつ玄関の方へ歩み寄る。

結局玄関まで辿り着くも、誰の気配も感じない。靴をつっかけて、護身用にナイフを構えながら、静かに戸を開く。

「え、っぎゃああああ吸い込まれっちょ誰かあああああ」

戸を開くと、そこは暗闇だった。お先真っ暗。動揺する謙也を他所に、暗闇は勢い良く謙也を吸い込んで――

そして、誰もいなくなった。



>次回予告
目が覚めると森の中!? 自分の置かれている現状を把握しきれない謙也は突如、巨大なハチの群れに襲われるが――!
次回・人生を謳歌せよ番外編「現実はセーブ不可能」

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