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 河原での決闘もどき、はじめから見ていたわけではないが、結末にはモヤモヤしている。あからさまに振られても諦めの悪い近藤さんにも、不当な手段をとった向こうにも、どちらも正当性がないような気がするので、尚更ムカムカしてくる。
 そんな馬鹿みたいな決闘に負けて吹っ飛ばされた怪我を抱え、俺の部屋にやってきた近藤さんの手当てをしている俺が一番エラい。ちょっとした怪我を負う度に来るもんで、私費で器材をそろえている俺がとってもエラい。「ここは病院じゃねえんだよ」と言ったところで「でもトシはお医者さんだろ」とにっかり笑い手当てをせびるのはどうかと思う。俺の良心がいいように利用されているのだ。

「いや、でも流石にアレはストーカーだろ。警察なんだからストーカーは不味い」
「違うんだトシ、あれは可憐なお妙さんが暴漢に襲われないように見守っているんだ! 決してストーカーとは一緒にしないで欲しい!」
「……家にまで忍び込んだらストーカー云々というより不法侵入だろ」

 尊敬する上司がストーカーって救われない。色々と。成り行きがよくわからないが、とりあえずお妙さんに惚れてしまった近藤さんが、彼氏(仮)の銀髪の侍に負けたらしい。それもひどく卑怯な手で。
 卑怯もクソもあるもんか。お妙さんに訴えられたらこっちが十ゼロで負ける。

「それで、何で俺がソイツと戦うって話になってんだよ」
「俺の敵を取ってくれ、トシ!」
「面倒だなあ」

 煙草の煙をぷかりと吐けど、回避する名案は浮かばない。
 そもそも、メタ的にも銀さんに勝てるわけがない。負け戦にも程があるだろとは思うけれど、このまま近藤さんを放置するとまたストーカーが再開して二の舞になる恐れが在る。面倒臭いが、面倒臭いが! 渋々銀髪の侍探しを始めた。こういうことをしている隙にも書類が着実に溜まっているので早く終わらせなければ。

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