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 めんどくせぇと思いつつも、速達で送られてきたそれを適当な部屋に運びべりべりっと梱包された段ボールのガムテープを取るとその中には案の定狸もとい伊東さんがいた。見事に目を回しておりますその姿に溜息を吐く。

「伊東サン、おい起きろって」

 というか俺も近藤さんを護ってくれと頼んだだけでこんなアフターケアは全く必要なかったんだが。もうちょっと何か無かったのか。普通につれて帰って来いよオイ。
 一向に起きないので段ボールから半身を乗り出した状態で眠っていて頂くことにして、短くなった煙草を捨て新しいものを咥えて火をつけた。

「ふくちょーこんなとこにいたんですか? ちょっとアンタの部屋書類が多すぎて入れない、ってどうしたんですかこの狐」
「狐ェ? 狸だろどっからどう見ても」
「いやどっちでもいいですけど他の奴らも困ってるんでさっさと片付けてくださいよ、書類もその狸も」

 山崎は今日の朝に「治りましたから仕事させてください」と必死にお願いしてきたので無理をしないようにと念を押して、内勤のみ許可したのだ。俺も人のこと言えないが奴も相当の仕事中毒だ。
 というか俺はむしろあれだけ失血して未だに直っていないのに痛くないと言い張り元気に働く気力と、黒幕が寝転がっているのに踏み倒さない精神力に脱帽した。俺だったら絶対に腹踏んでるわ。



 速達からそう時間も経たないうちに近藤さんと総悟たちも帰ってきた。暢気に土産なんか買ってきて、俺に話したいこととやらもたんまりあるらしい。
 そんなこんなで茶請けに土産話を聞いていると、突然ぎゃあああと涙混じりの叫び声が屯所を廻る。声の発生源に行けば、モブの隊員は抗う狸の腕を振り回されながらも掴んでいた。

「ちょっとアレ土方さんのナマモノじゃねーかィ」
「ナマモノって言うな俺だって返品したいくらいだよあんな狸」
「えっあれ先生じゃないのねえ二人共何の話してるの狸?!」

 状況把握に苦しんでいる近藤さんは一生そのままで良いと思う。本当にアンタって人を疑えない性格だよなあ。疑り深い悪役がそばにいないと、そのうち壺でも買わされそうだ。
 兎に角落ち着け、と伊東に言うとちょっと大人しくなった。まあこの人は俺にとっては災厄の種以外の何者でもない。同情はするけれども。

「俺を嵌めようなんて、お前には十年早いんだよ」
「……君は僕よりも狡猾だったとでも言うのか」

 さあね、とはぐらかし煙草を吸った。

「俺は、元からアンタを嫌ってなんかいなかっただけだよ」

 勝手に俺を目の敵にしやがって。俺は、頭が回って仕事が早い人が好きなんだ。……みすみす逃す手はあるまい?

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