「二人共、やっと来たか」

壁の穴に群がる巨人共を二人掛かりで殺し尽くすと、俺達二人に気付いたエルヴィンは、ほっとしたように声をかけた。彼にしてはとても珍しい表情だ。きっと、この現状では一人でも多く戦力が欲しいのだろう。

「向こう側の川に船を用意した。そこまで生きている人間を全て移動させる」
「……ウォール・マリアを放棄するのか」
「仕方が無い。生き残るためだ」

そう言いながらも、エルヴィンは悔しそうな表情だった。人類はこの壁の中でしか安息を保てない。しかし、今回「巨人は壁を破る」ことが出来る、と証明された。壁といっても扉の一部だが、人類の生活圏がこれでまた狭まった、というわけだ。またいつ襲ってくるか分からない巨人の恐怖に怯える日々が、始まる。

「リヴァイ、ハンジ」

二言三言、作戦内容について言葉を交わした後に俺たちがようやく向こう、戦場へ一歩踏むと、不意にエルヴィンは俺に背後から声を掛けた。ゆるりと背後に向きなおす。

「絶対に、生きて帰って来い」

返事はしない。その代わり、少し肩を竦めた。
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