「行くぞ」

エルヴィンは壁外への扉に手を掛ける。重く硬く閉ざしていた扉が開く。
見渡す限り広がる草原。愛馬は今日も調子よく野を駆ける。壁に阻まれる生活より余程壁外にいる方が好きだ。(客観的にはそう見えないだろうが)俺は機嫌よく馬を走らせていた。


陣形のまま走り続けることウン十分、ようやく目的の場所に辿り着いた。作戦決行は壁から出て一番近い森で行われる。どうやら、巨人を森に誘い込んで捕獲する作戦らしい。
今日の俺はとりあえずエルヴィンに着いていけばいいらしい。正直付いて行く必要はないのではと首を傾げたくなる任務内容だが奴曰く「保険」だそうだ。まあ、行かないで死なれても良心が痛むのでしょうがない。

「それで? どうやって捕まえるんだ」
「へへーそれはねえ!」

無駄なスイッチを押してしまったようだ。喜色満面といった様子で目を輝かせて口角を上げたハンジは、馬から下りるとすぐ傍に留めてあった馬車の、荷台の荷物を覆うように掛けられていた大きな布を、勢い良く引っ張った。

「これでぶっ刺すのさ!」

俺達の使っている立体機動のワイヤーと同じ太い糸が、巨大な糸巻き(のようなもの)に一杯まで巻かれている。その糸の先端には尖った針のようなものが鋭く光っていた。
それと同じものは、森の中の俺達の居る開けた場所を囲うように十個ほどあった。確かに補給物資にしては多すぎるとは思ったが、そういうことだったのか。

「で、俺は何をすればいいんだ」
「リヴァイはね、待機」
「は?」

ハンジは良い笑顔で宣う。

「君はね、確かに兵団一の戦力だけど、ただ一つ欠点を言うとするなら、君、殺すことしか出来ないだろう?」
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