ここで生き残るために必死で強くなって、巨人を駆って。そうしていくうちに、どうしてだろうか、俺は自分が異世界の人間であることを徐々に忘れつつあった。それを、おそらくはこの世界に「適応した」とでもいうのだろう。気が付けば、あたかも産まれてこのかたずっと壁の中で生きていたかのように、ごく自然に振舞っている自分に気がついては時折寒気がした。演じているつもりが、そうなってしまっていたのである。

それは、確かに「リヴァイ」にとっては喜ばしいことだったのかもしれない、と今振り返るとそう思う。あの日、あのとき「頑張れ」と言ってにやりと笑った彼にとっては、おそらく俺が過去の平和だったあの頃の記憶を捨てて、この世界へ順応して回帰することを望んでいるのだろう。案外ここも心地よいし、人類最強と崇められるのもそりゃまあ悪くは無いとは思う。

だけど、俺は忘れたくないんだ。
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