う (1/3)
大通りから一本潜るととたんに騒がしい気配も消え、怪しい人影がちらほらと見え隠れする裏路地に入る。今月は薬物取締り強化期間と銘打って、監察が調べ上げた薬物の取引が多いらしいという道を帯刀して歩き回るというなんとも趣味の悪い月だった。ヤク中は普通の犯罪者よりも恐ろしい連中で…ってこんな話はどうでもいい。

問題は、今目の前に万事屋が血を流して倒れていることだった。奇しくも見回りの片割れは総悟で、奴はいつも誰との見回りでもふらふらといずこかへ行って、俺が屯所に帰る頃にはのんびりと縁側で誰かとお茶していたりする。今日も例に漏れずいつのまにか傍らから消えていた。

「っおい、起きろ!」
「…あー? あ、大串君じゃねーか。ひさしぶりだなぁ」
「いや呑気に挨拶してる間も血ィだらっだらなんですけど」
「ああ、大串君お医者さんだもんねえ。それならいっちょ治してもらえませんかね」

動ける位に手当てするだけでいいから。そう、にかりと笑って言われる。動ける位、って手当てしたらまた大立ち回りするつもりなのか。

けれど、おそらくそれを止めても、そもそもの治療を断ってもおそらくは結局のところ押し切られるような運命を悟ったので、仕方なく手持ちの包帯を使い切ってしまおうと思ったのだ。ほら、古かったから買い換えないといけないけど勿体無いだろ?