う (1/3)
幸村が“私”の名前を囁くと、思わず彼をガン見してしまった。ううん、何かが引っかかるんだけど……誰だったっけ?

「お前らトランプやってんのか? 俺様も混ぜろよアーン?」
「あー白石と怖い兄ちゃん楽しそうなことしとるんかワイもワイもー!」
「白石、幸村、明日の練習メニューについて相談があるんだが」

なんて見つめ合っていると、騒がしい足音が部屋の唯一の出入り口から響く。それによって帰って来た跡部や長風呂からようやく出てきた手塚、そして金ちゃんが遊びに来たのを知ると、見つめ合っていた私達はそれを機に目を逸らした。空気読めや阿呆共……なんて言えないけどね! あと怖い兄ちゃんって言わないであげて、ちょっとへこんでるから!

「っそれで、相談って何?」
「え、ええと金ちゃん、これから俺ら大事なお話すんねん。せやから謙也くんの所にでも行きや、な?」

金ちゃんはえー、とぶうたれていたものの、大人しく部屋から出て行った。

その後はそのまま四人で明日のことについて会議していたのだが、跡部と手塚は珍しくと言ってしまってはアレなのだが、彼らは空気を読んだのか、俺と幸村の間に流れる気まずい空気に触れられることも無くて本当に良かった。