う (1/3)
大きな捕り物が成功したその夜。(未成年だが)酔った勢いで土方さんに絡みに行くがうっかりいつも通りそっけなくしてしまった。酔った意味も無くいつも通りの会話をするが、その際に少々気になることを言われた。

「全く、昔も今も変わりやしない」
「……そりゃアンタは髪もばっさり切ってイメチェンしちゃって」
「そういうこっちゃねーよ」

外見の話かと思えば違うらしい。何がだろうかと、昔のことを思い出してみることにした。



かなり昔のことなのでよくは覚えていないが、真昼間から悪党に絡まれたのだと記憶している。お使いの途中、自信満々に姉に行くと宣言した割には少々心細く、また店への道は広かったものの人通りは少ないので応援は期待できそうに無い、と薄っすら思った。
下賎な笑い声が耳についたが、しかめっ面をしたところで何の役にも立ちやしない。抵抗しても、子供と大人では力の差が歴然としていた。悪党は俺が握り締めていた財布を取り上げ、目に付く金銭的なそれも全て取り上げたが未だ足りないらしい。

「おお、よく見りゃ可愛い顔してんじゃねェか。持つモン持ってねえんなら、か  
「そこ、邪魔なんだけど」

何故かそのときだけ、吹いていなかった風がびゅうと吹き荒れ、悪党を伸した男の長い髪が舞うのを見た。その背後には太陽が差していて丁度後光のようになっていたが、今となってはそれも全て幻覚かもしれないと思っている。流石にそれは出来すぎだ。