う (1/3)
「……お主、馬鹿でござるな」

何故部下を庇ったのかと聞けば、曖昧にさあとの返事。苦しそうに血を咳き込む姿に、背後の庇われた部下は蒼白になっていた。
戦場に居るにしては優しい歌を持っている。そう、漠然と思った。



馬鹿なんて言葉では足りない程の大馬鹿者ですよアンタはと搬送される車の中で山崎に怒鳴られた。

「副長は命は平等だとか思ってるのかもしれませんけどね、あのときアンタが庇った隊士よりもアンタの命の方が重いんですよ。生きてるからいいとかそういう問題じゃなくて、副長はちゃんとそれを自覚してください」
「そうは、言っても、なあ。つい体が、動くんだ、」

かっすかすに乾いた口で笑うと本当に馬鹿ですね、と山崎は泣いた。本当に昔っから迷惑心労しか掛けてなくて申し訳ない。これが俺だ。

俺だって死ぬのは嫌だ。それでも目の前で命を見捨てることは出来ないのは最早習性とも呼べるのかもしれない。でも、しなかったことを後悔するより、思う通り動いて怒られた方が余程、素晴らしい。
そう思わないか、河上万斉。