い (2/3)
二日目の晩御飯は、跡部が雇ったシェフが用意してくれた。よく分からないけど美味しい料理を飲むように食べ早めに片付けると、前に座っていた謙也くんは俺の奇行を何してるん、と怪しむかのように言った。

「…あー、練習しようかと思って」
「え、まだやるん? よおやるなぁ」
「いやぁ、皆この間の全国よりまた強おなってるしな。負けてられんわ」

納得してまた食べる作業に戻った謙也くんに手を振ると、俺は一度着替えとラケットなどを取りに部屋に戻る。嘘は言ってないつもりだけど、何だか申し訳ないな。

既視感はあれど思い出せないが、あれから聞く機会も無く。だからといって避けるのはやりすぎたと思うけど。

「…まあ、後々考えるか」

それよりも今は練習だ、と気を奮い立たせると、まずはサーブから、と傍に置いてあった籠からボールを一つ手に取り空へ放り投げた。対角線上に飛んでいったボールを拾う人は居ないのでころころと転がった。籠からボールをもう一つ取ってると、先程には無かった不自然さに気付いて真っ直ぐ向かいを見た。


きみは変わらない笑顔で
星空の元、彼は笑って私に手を伸ばす