い (2/3)
最近のこの町の女は大体真選組の連中に夢中だ。私は違うけど。今日も今日とて見回りにやってくる真選組の副長様を拝んではああと溜息を吐いたりしている。私は違うけど。

私の目下の悩みはだんごが売れないことと、奴、真選組副長の煙草である。最近は禁煙だのなんだの言っている癖に何故だかここら一帯は禁煙にならない。何故かってそりゃあ、副長様がNOサイン出してるからだって私は思っている。

そんな私にチャンスが訪れた。奴が煙草の箱を落としたのだ。そそくさと拾い声を掛けると、奴は間を置いて振り向いた。

「落としましたよ、煙草」
「あ、ああすまない」

差し出すふりをすると奴は手を伸ばすが、私は煙草を掴まれる前にそれを地面に落として下駄で踏み潰した。木っ端微塵、絶対に吸えない。奴は何するんだよとかほざいていたがそんなことより私には言いたいことがあった。

「イケメンだから煙草吸っても許されるって思ってんじゃねーよ!」


浪漫レディ
「ほらだから禁煙しましょうって言ったのに」「…いや、まあそうだな…」