い (2/3)
温泉から上がりそこらでぼんやりしていると、ふと後ろから影が伸びてくる。おそらく総悟だろうが驚くべきことに何もしてこない。逆に何か企んでいるのではないかと心配するが、後ろを振り返る前に奴は言う。

「お疲れの土方さんの肩をもんであげやすぜ、今なら五分五百円」
「高いわ阿呆」
「エーそれなら三分三百円に負けてあげやすよ全くもう」
「…それ何も変わってねェじゃねえかよ」

面だけ負けてんじゃねえよ。五分やったら五百円取るんだろうが。総悟は俺の言葉を聞くと、あーあと諦めたように溜息を吐いた。

「それなら、今だけタダで幾らでもいいですぜィ」
「…それはそれで気味悪いな」
「俺が折角やってあげてるのにその言い草は何だって話でィ。旦那が言ってやしたが、仕事は選り好みしたらいけないって」
「そりゃあアイツの場合だろ。俺達は多少選り好みしても良いんだよ」
「横暴」

お前だけには言われたか無いな。俺が何も言わずとも肩に伸びる手に、今度は何も言わずに身を任せた。


I hope that everything of you goes well!
苦労を掛けられることは、即ち信頼されているということで。