「それでオサムちゃん、話って?」



オサムちゃんは部室にいた。聞くと彼はニヤリと笑い、机の上のスーツケースの鍵を開けて中身を取り出した。

黄金の、ガントレット。明らかに競馬で山を当てた。間違いない。



「オサムちゃん、それ……」

「白石、これお前にやる」



オサムちゃんはそういうと、勝手に俺の左手にガントレットを付けて包帯を巻いた。オサムちゃんの顔を覗き見るが、特に何も変わらない何時もの表情だった。



「自分、目立つの嫌やろ? 包帯も十分目立つけどそれは堪忍な」



包帯を巻いている間、俺達は黙ったままだった。






巻き終わって、オサムちゃんは言った。



「絶対に外さないこと。そのガントレットは未来の自分が本当に困ったときに外すもんや。まあ、最初は何時も通りのプレイは出来へんかも知れんけど、そこは練習あるのみやな」

「はぁ」



左手を動かすと、ずしりと重い感覚が肩に掛かる。咄嗟に眉をしかめると、オサムちゃんは狙ったようににやりと笑った。

正直、オサムちゃんが俺にここまでしてくれるとは思わなかった。普段はちゃらんぽらんで競馬好きなただのオッサンだけど、やっぱり先生なんだなと初めて思った春のとある一日だ。
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