なにかあればぽちっと。返信不要の場合は頭に×を

旅路で過去篇/土方、山崎を拾うの巻(三)
拍手ログはこちら


囲炉裏には炭が焚かれて、部屋の中は十分温かくなっていた。近藤さんがやってくれたのだろうか。流石、気が利く。
抱いていた子どもを布団に寝かせ直すと、道中うつらうつらと目を閉じていた子どもがぱちりと目を覚ました。

「目ェ覚めたか。お前、腹減っただろ。作ってくるから今度は大人しく待ってろ」

これでも優しく安心させるように言ったつもりだったのだが、年齢に見合わぬ鋭い視線が送られる。なんだその目は。そして何故震える。怯えられているのかはたまた警戒されているのかよく分からん。
兎にも角にも、それは俺にもよく見覚えの有る目つきだった。睨まれても蹴られても梃子でも動かんつもりだが、いやまさかな、と考えては溜息を吐く。逃げ出したりと迷惑な餓鬼だが、とりあえずは立派な客人だ。が、いや、でもあれは立派な「人を殺す」目だったが。
一目見たときから、まさかとは思ってはいるが。この子どもの正体に、少し、心当たりがある。

「……かえして」
「どこに帰せばいいんだ? 生憎と行き倒れてるお前を拾っただけだからな。それとも勝手に帰るのか? それこそ、今のお前の体じゃあ無理だろ」

さっき逃げた理由も、俺は分からなくもないが。
とりあえず寝てろ、と俺の出来る限りの穏やかさを以って言えば、子どもは初めて大人しく従って目を閉じた。