*負け続けることを捨てた球磨川先輩の話
ちなみに、根本的に大嘘憑きで「過負荷であること」をなかったことには出来ないので、「負けることを無かったことにすること」を虚構に返したと見せかけたただの暗示で「自分は絶対的勝者だ」と信じ込んでいます。あとあまり私自身がめだかにそこまで詳しくないのでそこらへんはほら、フィーリング。
全く関係ないけど今まで文章書いてて「ひょうきん」なんて単語初めて使った気がする。

イメージタイトル/欺瞞(deception)、献身(devotion)、捧呈(dedication)



/球磨川禊と人吉善吉


『人が呼吸をするように、僕は勝ち続けるんだ』
妙に自嘲染みた声音で球磨川禊はそう呟いた。
どうしてか善吉と球磨川はその日一緒に下校していた。果たしてどういう意味なのか、表面上の意味にしか捕らえることが出来ず善吉が隣を歩く球磨川をふと振り返った。
「おい球磨川、それって」
『……やだなあ善吉ちゃん、恥ずかしいから意味なんて聞かないでくれよ?』
いつもの中二病さ、と歌うように言う球磨川の表情はいつものひょうきんな笑い顔だったので益々善吉は混乱した。先程の球磨川の言葉にはもっと哀愁漂うような感情が含まれていたような気がしたからだ。

その言葉の意味を理解したのは、それから随分と後のことである。


/球磨川禊の独白


『あ、それではみなさんご唱和ください   
このとき、本当は少しだけ、嫌な予感がしていた。
死ぬのは怖い。それでも今は「死ななければならない」場面であったし、球磨川の信条である「勝つこと」はおろか過負荷が持つ特性である「負けること」すらも叶わない。
けれど球磨川禊としてはそれを実行せざるを得なかった。おそらく、「彼が球磨川禊だから」という理由以上に相応しいものはあるまい。彼はその名前にすら縛られているのだ。

『It's All Fiction!』


/球磨川禊と江迎怒江


怒江にとって、球磨川が初めて「腐食しなかった相手」であった。それが彼女にとってどれほど希望を与えたか、否どれだけ過負荷に働いたか。
実際、球磨川は決して怒江に触れて腐らなかったというわけではなくただ単に無かったことにしただけなのだが、それでもよかった。自分を抱き締めて愛をくれる人ならば、誰でもよかった。

ただ、一つだけ彼にも誤算があった。

自分の感情とは時に自分ですら分からないもので。怒江はいつの間にか、球磨川禊に紛れもない恋愛感情を抱いていたのである。彼女は次第に球磨川の笑顔が愛しいと思い、泣き顔に苦しむ一介の乙女に成り果てていた。改心ではなく信心、恋心。


「……だから私は、あなたを、まもりたかったんです」
『……怒江ちゃん、今そんなこと言わないでよ』
まるで死んじゃうみたいじゃないか。文字通り命を賭して愛しい人を守りきった怒江は、泣きそうな顔をする球磨川に、ふと、渾身の力を振り絞って笑ってみせた。
「週刊少年ジャンプを読んでるんじゃあるまいし、そんな死亡フラグはそう簡単には建ちませんよ」


/球磨川禊と安心院なじみ


いつものように(と言ったら彼女は怒るかもしれないが)、安心院なじみは突然生徒会室に姿を現した。何の用だ、と訊ねるめだかたちを無視して、彼女はただ一人の元へ向かう。
そのとき球磨川は寝ていた。彼の艶やかな黒髪を安心院はあたかもスーパーのレジ袋を掴むくらいの程よく強い力加減で引っ張り彼を起こし、いっ、と反射的に声を上げた球磨川に、にこり、と嫌みたらしく微笑みかけた。
「君、寝たふりだなんてみっともない真似はよしなさい」
『……安心院さん』
「君が易々と死ねなくなってからぱたりと“教室”を訪れなくなって僕も淋しいんだ」
『それにしては随分なご挨拶じゃないか』
「ああ、それは」
安心院なじみはその自慢の完璧な顔で笑んだ。
「君が、いつまでも現実を見ようとしないからだ。自分は過負荷なのだという現実を、勝つだなんて今まで一回もしたことがないという事実を受け止めることなく自らに暗示を掛けてのうのうと真実を螺子曲げて生きているからだよ、球磨川くん」
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『球磨川先輩-2』2013/10/07 Mon 16:46
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