*微かに匂う程度に成代要素

昔から戦うことは大の苦手であった俺も今や立派な兵士である。古城の一角にある大きな窓から外を眺めると、そこからは遠くのほうの湖まで見渡せることが最近分かった。
この世界には、明確な地図は無い。測量を生業としていた俺には少々物足りない世界だが、その代わりと言っては何だが、巨人という得体の知れない化け物が存在する。やせっぽっちだったりデブだったりイケメンだったりと良くわからない奴らだったが、奴らのお陰で俺がそこまで暇になることも無かった。奴らは駆逐される側、決して俺達を食することを許してはならないのだ。
「り、リヴァイ兵長」
「何だ」
「いえ、あの、何を見ているんですか」
俺の傍に来るたびに怯える様子を見せるエレンは、しかし俺がそちらに振り向かないのを疑問に思ってなのか、俺と同じ方角を向くとうわぁ、と素直に感嘆した。
「すごい綺麗です!」
「……そうだな」
だがやはり俺の手が触れるほど近くに居ることに突然気付いてまたもや恐怖する素振りを見せる。巨人云々のことも含めて若いのにも可哀想だとか、そういう憐憫の類では決してなかったが、思わず溜息を吐くとまたびくりと怯えた。
「エレン」
「はい」
「お前、俺が怖いか?」
否定することを望んでいた。怖くないと言われるだけで安堵できるような気がした。黙ったままのエレンを見かねて、俺はその場から踵を返した。

「リヴァイ兵長は優しいです!」
廊下を歩いていると突然背後からエレンは叫んだ。馬鹿め。誰にも伝わらないように、しかしその場で囁くと、エレンはもう一度同じことを繰り返したので俺は奴の無防備な腹を蹴り倒しに行こうと思う。
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『進撃の巨人リヴァイ成代』2013/04/26 Fri 06:54
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