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10 / 05

「なんやねん結局今年も帰って来おへんの!?」
『『スマン〜』』

スマホから聞こえる二つの声はDNAとやらのせいか一つに聞こえ一種のハウリングのように私の鼓膜に響いた。
ていうかちゃんと2人一緒におるんかい。侑もうすぐ大事な大会始まるやん。

隣の家で育った18年。
あれからあっという間に10年の時が過ぎ、今もこの場所にいるのは私だけだ。嫁になんて行かせへんなんて言ってた父も「いつ出るん?」なんて目でこっちを見るのはせめてあと2年はとりあえず気づかないフリをしていたい。

「…まあ、幼馴染やからって毎年当日祝うんがおかしかっただけなんやろうけど」

スマホをベッドに放り投げ、それに続くようベッドにダイブしてみればギシリと鳴ったスプリングが年季を教えてくれるようでなんだか少し悲しくなった。このベッド買ったのいつだったっけ。そんなに経ってないと思ってたのに。


侑も治も未婚とはいえ、立派に自立し各々の道を歩いている。何をするにも一緒だった血の繋がったあの2人ですら既に離れて過ごしているというのになんで私は未だに2人に固執してしまうんだろう。

「…婚活、婚活しよ。婚活や」

男に執着しているなら男に執着すればいい。短絡的な答えを浮かべ、もう一度スマホを手に取りSNSを開いてみても数少なかった男友達の更新は幸せそうな男女の写真か天使のような子供の動画で溢れている。


「なんやねんほんま…私、嫁行ってもええんやな、アホ双子…」

行かないんじゃなくて行けないんでしょ。
先日久しぶりに連絡を取った高校の旧友がチベットスナギツネのような視線を向けて私に言い放った言葉がぐるぐる頭に巡り、スマホをまた置きうつ伏せた。


「そもそもあの2人が悪いねん…こんな歳になるまで邪魔し続けたんそっちやん…」



昔から他に目を向ければ目の前二つの壁が立ち塞がった。

「俺らのやけど」
「何か用なん?」

あんな柄の悪そうなでかい男たちに睨まれればそりゃあ相当な覚悟がない限り私に寄り付く人もいないだろう。
それでも隠れてこそこそ付き合ったこともあったけど、必ず最後には「あの2人が側におると自信無くすわ」と去られた。


「あんたらのせいで私婚期逃しそうやわ」
「人聞き悪いなぁ〜なあサム」
「ほんまやでツム。風評被害や」

不貞腐れた反動で目を瞑り、ある日の記憶を思い出した。嫌味のように2人に言った言葉に対し、言動とは裏腹になんにも気にして無さそうな表情でボールに触れる2人。「あ」の声にピタリと動きを止め、2人見つめ合って3回瞬きをした後にぐりんと私に首を向けてきた。

「ちゅーか決めへんの自分やん」
「せやせや、このままやと自分で婚期逃すで」
「はぁ?」
「なぁツム」
「せやなサム。しゃーないな。アホな自分にもう一回だけ言うたるわ!」
「…?」


瞼の裏に映った映像。声もはっきり覚えてる。
そうだ、あれは夢じゃない。

「…あ」
「来たで」
「おいサムふざけんな!!なんで俺より先に入んねん!」
「鏡でやったら髪触っとるから邪魔やってん。お、見事に干物状態や」
「…嘘」

先程まで遠くにいると思わせていた2人は今、夢の中に落ちかけた私の目の前に立っている。


「なん、」
「なんでとかヤボなこと言わんといてな!」
「おん。それで、決まった?」
「…いやとりあえず」


ゆっくり起き上がり乱れた髪を整えて、ジィッと2人を見上げると一歩一歩こちらに近づく侑と治。


夢だと思っていたあれは確かな私の記憶
まだ高校生だったあの頃。あの時の私達。それでもあの時確かに2人は私の手を取り「ガキん頃に言うたけど」と気怠げな瞳をこちらに向けて重なる声で私に告げた。

“大人になったらどっちと結婚するか選び。
今から10年後、交際なんて今更いらん。俺らの誕生日が結婚記念日や。答え、ちゃーんと聞くからな”



あの時よりも大人びた風貌で。
あどけなさも消えた色を含んだ4つの瞳が私を見下ろし腕を引く。

「んで?どうすんの」
「ジューブン待たせてもらいましたけど?」
「え、と…と、とりあえず先に一ついい?」
「あん?」
「おん」
「あ、あの…」



侑、治。
誕生日おめでとう

ありきたりな言葉を告げればポカンとしたあと大きな溜息。その後すぐに顔を上げて2人の口角がゆっくり上がる。

おん、ありがとう。
これからも一生、俺の隣でそれ言うて。








(現実の大会とリンクさせたかったけど侑くん試合の合間にこんなことしないのでずらして捏造。1年ぶりくらいに書いたので駄文ですみません…)