「なんやねんあいつ」

りのが派手な音をたてて閉めていった扉を眺めながら、私は呟いた。それに対し白石は、乾いた笑い方をして「元気やな」と言う。全く、元気すぎて困るわ。
りのが騒がしく出ていったことで一瞬静まり返った教室は、再びにぎやかさを取り戻していた。白石に向けられる視線は相変わらずであったが。

「それで、委員会の用って何なん?」

私がそう言うと、彼ははっとしたように体をぴくりと動かして、用件を口にした。

「これ、見てくれんかな。ちょっと決めかねとって」

白石は自身が机に置いたプリントを指す。
前々から思っていたのだが、その左手に巻かれた包帯は何なのだろう。骨折にしては左手を多用しているような気がするが。
白石蔵之助は綺麗だと思う。その癖のない顔立ちも、さらさらと流れる髪も、爽やかでありながら妙に色っぽい声も。その上明るくテニスも出来るのだから、女子が放っておくわけがない。現にこうしている間も女子の視線を浴びまくっているのだ。

「どう思う?」

首をかしげて訊いてくる相手に私は「ええんとちゃう?」と返し「ここにこの資料を載せるとええかも」という提案もした。

「そっか、なるほどなあ」

白石の目が資料とプリントを行ったり来たりし、顔をあげると「おおきに」と言って教室を出ていった。
彼の向かうところはおそらく保健室だ。委員の担当教師のところへでも行くのだろうか。
先ほどの様子からして、りのが白石に好意を抱いているというのはほぼ間違いないと思う。
椅子にもたれる。背もたれはぎしっと音をたてて私を受け止めた。
私は目線を教室の中央へ移す。「弥生咲」。付き合っているという噂こそ聞かないものの、白石は彼女を随分と気に掛けているようだった。この教室に入ってくる間も彼女の方をちらちらと見ていたくらいだ。
弥生さんは可愛い。ふわふわの髪の毛とさらりとした声、大きな二重の瞳、人当たりのよい性格。
白石と弥生さんが一緒に歩いているとする。美男美女。お似合いだ。
まあ、それでも私はりのを応援するつもりではいるのだけれど。
私ってば優しっ。


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