ミントアイス

1月の寒空の下、インパクト音の響くテニスコート。氷帝学園テニス部は今日も今日とて部活動を行っていた。
ミノリは休憩に入っている部員たちにドリンクを配ろうとして、転がってきたボールに足を取られ、派手にすっ転んでいた。それに八千代ちゃんがあわてて近寄る。そしてあたしはというと、スコアブックを片手に、目の前を行き来するテニスボールを目で追っていた。

「ピロピロピロピロピロ」
「ゲーム中に妙な鳴き声上げるなよ」

審判をしているがっくん、もとい向日岳人が、審判台の上から言った。

「だって暇なんだもーん」
「スコアつけてりゃ暇なんてできないだろ」
「ふふん……愚か! そんなんだからいつまで経ってもがっくんはがっくんのままなのだ! 見ろこのスコアブックを! 真剣にスコアを記入するふりをして実は跡部のほくろを延々描いていたのだ! どうだ気持ち悪いだろう! 増え続けていく跡部のほくろで紙が真っ黒だ!」
「帰れ」
「おべっ」

いつの間にそばに来ていたのか、跡部があたしのスコアブックを取り上げ、それであたしの頬を打った。
愉快な音を立ててあたしは地に倒れ込もうとする。が、走ってやってきたミノリが地面すれすれのところであたしを受け止めた。ミノリは岳人に向かってドヤ顔をかましながら、身を預けたまま大袈裟に白目を向いているあたしの顔へ、右手に持っていたドリンクをぶちまけた。
青のスクイズから半透明のドリンクが飛び出し、太陽の光を反射してきらきらと輝きながら、白目のあたしへと軌道を描く。「水の表現はラッセンのような輝き。実に芸術的であった」と後に岳人は語る。

「だっはあ! ぶえっおえっ」

鬼気迫る表情で咳き込むあたしを見て、そばで見ていた鳳が「うわあ……」と声を漏らした。先輩に対してそれは失礼すぎやしないか。
咳が落ち着くと、あたしは立ち上がり、両腕を組んで跡部を睨みつけた。

「帰れだなんて酷いこと言わないでよ! あたしだって悪気はなかったのに!」
「さっきの会話を聞く限りでは、悪意しか含まれてなかったように感じたんだがな」
「うっすみません……許してください……」
「折れるの早すぎだろ」

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