山口賢二
※小さい頃のはなし
「紗希乃!」
「けんじくん、どうしたの?」
「ホワイトデーのお返しもってきた」
「わあ、ありがとう!」
「紗希乃がすきそうなのえらんだんだ」
「ほんと?うれしいなあ」
「あっちであけるぞ」
「うん。ママー!けんじくんと紗希乃の部屋いってくるー!」
「おいバカ。いるとこ言ったらみんな見にくるだろ」
「そっか。じゃあ、わたしの部屋にいったことにしてほかのとこ行こ」
「うん。だれもいないところ」
「それじゃあ、おばあちゃんお出かけしてるからおばあちゃんのお部屋ね」
「まっくらにできるところあるか?」
「うーん。クローゼットの中かなあ。こわいのやだよ」
「こわくしない。でんき持ってきた。かいちゅうでんとうってやつ」
「何するの?」
「キラキラしてるやつもってきたから、くらいとこで小っちゃいでんきつけて見ようぜ」
「キラキラ?!どういうの?」
「星と、きれいな石ころみたいなやつ」
「すごーい!」
「みっつもあるんだぜ」
「すごいすごーい!」
「紗希乃にやるよ」
「みっつもいいの?」
「うん。ぜんぶやる」
「じゃあね、半分こしよ。ひとつずつもらって、さいごのいっこはわたしがもらうね」
「しょうがねーな」