2/14と3/14のおはなし

山口賢二



※小さい頃

「おはようけんじくん。ハッピーバレンタイン!」
「わっ、なんでうちにいんだよ」
「けんじくんママがよんでくれたの」
「ふーん……なんのチョコ?」
「えっと、トリュフチョコ。おばあちゃんがお取りよせしてたやつだよ」
「えっ手作りじゃないの」
「チョコは買うのがいちばんおいしいっておばあちゃんが言ってた」
「そりゃそーだけどよ……」
「大丈夫だよけんじくん、そんな落ちこまないで」
「落ちこんでねーよ!」
「はい、こっちがけんじくんで、あっちがいよちゃんの」
「……オレのおっきくない?」
「あのね、ひみつのはなしなんだけど」
「おう」
「けんじくんにだけ、わたしのすきなハートのクッキーもいれちゃった」
「オレだけ?」
「そうだよ。パパにもお兄ちゃんにもいれてないの」
「ふーん……ま、もらっといてやるよ」
「へへ、ありがと〜」
「あっちいくぞ。きのう病院いった時にもらったおかしがたんまりある」
「それってよこながしってやつだよね」
「紗希乃のすきそうなやつはとってあるぜ」
「えっかわいいのある?」
「ある!ピンクのハートと、あと、地球の形してるのとか」
「すごい!見たい!」
「半分おまえにやるよ」
「いよちゃんには?」
「あいつにはあげない」
「いよちゃん泣いちゃうよ」
「……ちょっとだけわける」
「うん、そうしよっか〜」


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