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「立香くん、Mr.諸伏。結論から言おう。この世界は我々の元居た世界と混ざってもいるし、ループもし続けている。どちらが先かと言われたらおそらく前者。この世界が混ざった後に世界はループし始めた」
「世界が混ざった原因はともかく、何故ループしはじめたのか我々も考えあぐねていました。混ざってすぐに繰り返し始めたのではありません。マスターが小学校という場所に入学した初めの年が終わったその日から繰り返すようになったのです」
「それでも、全く同じ内容の日々を過ごしてるワケでもねーんですこれが。ただ、流れはおおよそ変わらない」
「そうそう。例えば、マスター君が学校で毎朝クラスメイトと朗読をしているだろう？その流れは変わらないけども、取り扱う話の内容は毎回違っていたりする」
「花を活ければ、花の種類が変わる」
「お出かけしたら、行くところも変わるのだわ」
「大きな流れが変わらない中で見つけたのが立香くんの友人……江戸川コナン。正確に言えば工藤新一」
「あの不思議な不思議な男の子、同じ流れの中にいるはずなのに彼が動けば変わっちゃうの」
「それじゃあ、マーリンの言っていた綻びが生まれているっていうのは全部コナンくんに関することなの？」
「それだけじゃあないとも。君や君の父親や、もちろん我々サーヴァントの動きも含まれているさ」
「けどねえ、流れの根幹を揺るがすくらいの変化を生むのはいつだってあの子供でしてね」
「あの子が小さくなってから、この世はぐるぐる繰り返し。小さなマスターと毎日お茶会をするのも楽しいけれど、ぐらぐら不安定に動かされちゃ私たちの目的も遠くなっちゃう」
「……君たちの言う、江戸川コナンという少年がループを解く鍵になるってことか？」
「ええ。あくまで仮定ではありますが」
「あの少年は繰り返している日々には気付いていないのに、次々と進んでいく。進もうとする意志が強い。ねえ、立香くん、それは一体なんだと思う？」
「元の姿に戻るため……？」
「その通り。彼が目指すゴールが元の姿に戻ること。決してループを解くために動いているわけじゃない。なのに彼の行動でループが崩れかけていく」
「繰り返すことと世界が混ざったことが仮に関連づいているとするなら、まずループを解くことが最優先であると当初の私達は考えたのです」
「そこで気の短い王様や女神様たちは、さっさと世界を元に戻そうとこぞってあの少年の手助けをしようとしたわけですがね。まあ、これがうまくいかないもんで」
「サーヴァントの力があってもうまくいかないことって何？」
「こちらの事情には踏み込ませない、とでも言わんばかりにするすると逃げられてしまうのさ」
「あの子が探してる人を捕まえて目の前に連れて行こうと思っても何故だか捕まえられないし、逆にあの子を連れて行こうとしてもそれも中々進まないの」
「彼らは進められて、私達は進められない。つまり、元々この世界に存在した魂と肉体を持つ人間でしかループを打ち砕くことはできないと仮定した。そこで、ループの根幹を揺るがす力を持てなくても、それをどうにかできる人たちを動かす方に尽力する方向にシフトチェンジしたわけさ」
「コナンくんの身体を小さくしたのは黒の組織……そして、そこには今セイバーがいるってことは……！」
「組織だって？待て、その組織は生前の俺が潜入していた組織だぞ？！」
「ああ、君は"スコッチ"だったね。コードネームは知っているよ。辺鄙なクソ田舎で組織の頭脳としてあくせく働かされているこの私の耳にも入って来ていたさ。世界が混ざったタイミングでカルデアと魔術の秘匿性が失われたわけだけど、そもそもこの世界において魔術なんてものは更に珍しいものだった。混ざった後の時計塔は力も財力も失くして、ただのカルト集団扱いさ。そんな中で時計塔と手を組もうとしたのが黒の組織でね。運悪く彼らにマシュを奪われてしまった」
「そこで、マシュ・キリエライトの奪還とこの世界の状況を探るため組織にサーヴァントを数名送り込みました」
「探るためって……例の組織に世界が混ざった原因でもあったのか？」
「原因はひとつだけじゃないのよお兄さん。みーんなバラバラになっちゃったの」
「そこは追々話すとして、君たちには今後のことを決めてもらわなくちゃならないんだよね」
「ループは何十回と繰り返していけばきっと崩壊するだろう。けれどね、混ざった世界がどうなるかはわからない。立香くん。君は現在の平穏と、過去の栄光どちらを選ぶ？一度は平穏を望んだね。それでも、本当にそれは平穏だったかい？今でこそループの中にいて、母君と我々と穏やかに過ごしているけれど、夢が終わればその先はどうなるだろうか」
「元に戻るって言ったって、元の世界に戻れる方法なんてあるの？」
「可能性はあると思うの。だってね、」
「混ざった原因のひとつは君の望みと、我々の望みのせいなんだからね」