拍手ログ じぇらしー


ずごごごごっずこっ

「ねーねー、紗希乃ちゃん。なんで梓さんのこと睨んでるの?」
「ほっといてコナンくん。小学生の君には関係のないことだよ」
「今のアンタも小学生だけどな」

この前あっけなく身バレしてからコナンくんや哀ちゃんともっとお近づきになれたけど、降谷さんがそれをあんまりよく思っていない。と、いうのも少年探偵団に混ざって阿笠邸や工藤邸に出入りすることを問題視してるみたい。といわけで小学校から帰ったらわたしはだいたいポアロで時間をつぶしているんだけど、今日は隣りにコナンくんがいる。メロンクリームソーダはあっという間に無くなってストローからズコズコ音が出た。

「つーか、まじで薬飲んでないわけ?なのになんでそんな小さくなってんだ?」
「わたしの本業を思い出してほしい。万が一捕まって飲まされるとかはあっても自分から飲むわけないじゃん」

何回同じ話をさせるの。しかも外で。警戒心薄いぞ少年。これだったら降谷さんを警戒してる哀ちゃんのが正しい反応に思える。まあ、なんであそこまで警戒してんのか知らないけど。そして哀ちゃんまで組織のこと知ってるっぽいのが不思議だよね。もしかしたら関係者かなあ。あとで探ってもーらお。

「そうなんだけどさ。小さくなった原因がわからねーと戻りようがなくない?」
「戻れていたらわたしはこのピンクのランドセルを背負って梓さんを睨みつけてなどいない……!」
「あ、やっぱ睨んでんの」

梓さんがこの1時間で安室さんと呼んだのは計4回。……4回?4回って多くない?お客がそこそこいて、それぞれ注文とって作って、運んで…。スタッフは降谷さんと梓さんしかいないし、わざわざ名前を呼ぶ必要は無いし、なのにわざわざ『安室さん!』って!!

「ぐうう……わたしは、べつに、"安室透"がすきなんじゃないけど……!だけど……!」
「梓さんのこと嫌いなの?」
「嫌いじゃないよ。でも、思えばこの姿になってから梓さんに良い印象がないかもしれない」

なんでだろ。なにも酷いことされてない。梓さんはいつも通りなのに、わたしの一方的な印象が変わってる。……あ、そうか。大人の女だからだ……!わたしがちっちゃくなってしまったばかりに降谷さんが梓さんに持ってかれちゃう。わたしの出る幕なんてない。せいぜい遠い親戚からのお祝いの言葉を結婚式でほんのちょっと読ませてもらえるだけだ。それも小さい子供だからという特権で。いやでも公安職員の、ましてや潜入捜査官の式は基本的に認められないから挙式はない。てことは見なくて済むねやったー!

「でもどうしよう、そもそもふたりが結婚なんてしたら即死するレベルでショックうけちゃう……」
「待って。どこからどうなってそこへ行きついたのか推理できないんだけど?!」
「うおおおおコナンくんどうしようわたしはこの想いを一生抱えたままランドセルを背負わなくちゃいけないなんてえええ」
「だからわけわかんねーって!しかもずっとそのままなわけねーだろ!」
「え?成長するの?どのくらい?コナンくんこの身体になってどれくらい成長した?」
「まだ半年も経ってねーよ」
「大人の半年と子供の半年じゃ差があるよ!絶対身長伸びてるって、ちょっとおねーさんに見せなさい」
「バーロー!今はたいして変わんないだろーが!」

コナンくんの座高でも図ってやろうと、コナンくんの頭をぐいぐい引っ張っているとふいに陰が差した。なんだか嫌な予感だ。おそるおそる顔を上げると、とーっても笑顔の安室さん、いや……降谷さんがいた。

「随分と、楽しそうだね」

コナンくんが光の速さで去っていく。「僕、サッカーの約束してたんだ!」嘘つけ、みんな用事があるって言って帰ったからここにきたくせに!それから降谷さんに店のなかで騒ぐな、とかコナンくんに絡みすぎるなとか、頭触ってなにしようとしてたんだとかいろいろ問い詰められた。逃げるようにトイレに駆け込んで、プライベートのスマートフォンを見たらコナンくんから一通。

『言っとくけど、安室さんも紗希乃さんのことちゃんと気にかけてるよ』

トイレから様子を伺うために顔をひょっこりだすと、降谷さんがバツの悪そうな顔をしてショートケーキののったお皿を持っていた。

「怒って悪かったよ。お詫び」
「いんですか?」
「うん。食べな」
「わーい!ありがとうございます!」

コナンくんが降谷さんにも連絡をいれていたなんてこの時のわたしは知らないのであった。

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