お好み焼き奇想曲

あかまる


わたしの部屋に入ってすぐにノヤが手をつけたのは、某リラックスした茶色いクマの大きな顔のクッションだった。すげー、顔でけー!と嬉しそうに騒いでるノヤのせいで何のためにこいつがうちに来ているのか忘れるところだった。

「そいえば、はい。回覧板」
「おうサンキュ!」
「で、何が見たいの?さっきざっと見たけど日曜の町内清掃くらいしか目立ったの無かったよ」
「掃除はしねえ。バレーだよバレー!」
「……はあ?」

バレー!と楽しそうに呟きながら、ノヤが写メっていたのは町内体育館の月間予定表。それから、ママさんバレーの募集欄をじっと見ていた。

「ママさんバレー?」
「部活禁止があと3週間残ってんの。でも、休んでる暇なんてオレにはねーし、一人でできる練習にも限りがあるからよー」
「それで、奥様方に混ざろうと…。ていうかそれ初めに言ってくれたら写メってあげたのに」
「あ、確かに。まー、でも今やることねーしなー」
「だらだらしてるの見てるとノヤがノヤじゃないみたい」
「オレもウズウズするぜ、ほんと。うらあっ!」
「わ、やめてよリラッ●マ投げないでよカワイソウ!!」
「投げたんじゃねー!オーバーハンドだ!!」
「知らんわ。っていうか上がってないし!」
「このクマに空気が入ってないのが悪りーの」
「ただのクッションに求めすぎだよノヤ」

あっ、とおもむろに立ち上がったノヤはカレンダーの近くに行き、カバンから取り出した赤ペンで3週間後の木曜日をぐるぐると丸で囲った。

「ここ!」
「なにー?」
「部活解禁日!」
「なんでわたしのカレンダーに書くのよ」
「オレの部屋にはカレンダーなんてねーからな!」
「だからってここに書いたって意味ないでしょーが」
「確認だ確認」


 


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