恋人はご機嫌ななめ
※セブルスがデスイーターにならず、ある程度いたずら仕掛け人たちと主人公を通して関係を築いていること前提のお話。
目の前の恋人は怒っている。
否、激怒している。
「どうしたらこんなことになるのだ」
部屋の惨状を見る限り、一言で表せるような出来事ではない。
元凶は分かっていた。こいつらだ。
「おい!スニベリー!邪魔してるぞ!」
すでに出来上がっている犬男は日に油を注ぐだけだと分かっていたのに、口にガムテープを貼らなかったことだけがわたしの落ち度ということにしたい。
「説明していただきますかな?なまえ。そう、じっくりと」
青筋が何本も立っているわたしの可愛い恋人、セブルスは口元に引きつった笑みを浮かべながら手招きした。
これのきっかけとなったのは、わたしの誕生日だった。
明日、また歳を重ねるわたしは、もういい歳でもあるので同棲しているセブルスと二人で、ささやかにお祝い程度で十分だと思っていた。
しかし何かのイベントにつけて騒ぎたがる同級生たちの存在を忘れていた。
彼らのストッパーであるリリーとルーピンは、生まれたばかりのハリーの面倒を見るため、満月が近いから、ということでそれぞれ不参加だったのがいけない。
おめでとう!と口々に言いながら部屋に遠慮なく入ってくる彼らに対し、ほどほどに、と言ったわたしの言葉は一切通じていなかったのだ。
「まあまあ、なまえも反省してるしそんなに怒らなくてもいいんじゃない?」
「元凶はお前だろう!」
酒の入った瓶片手に絡んできたジェームズにげんこつをくらわせたセブルスの判断は、最高に正しい。
そのまま力づくで(思いっきり魔法を使って)彼らを追い出したセブルスは、何も話さないまま部屋を片付けていく。
「……ねえ、怒ってる?ごめんね、部屋汚くしちゃって」
わたしが汚くしたわけでは断じてないのだけれど、わたしの恋人は一度拗ねると長いのでとりあえず顔を覗き込みながら謝っておく。
しかしセブルスの怒りは生半可じゃないようで、その後も洗浄魔法を使いながら無言は続く。
そんな中。
「部屋が汚くなったから怒っているのではない」
沈黙を破るように、ぼそりとセブルスが呟いた。
予想外の一言にわたしが首をひねったままでいると、セブルスは「鈍い。」と顔をしかめたまま続けた。
「女ひとりの家に男をあげるなど、無防備すぎると思わんのか。お前は自覚が足りない」
そういう言葉に慣れないのか、いつもより幾分小さな声で、しかしはっきりと言うセブルス。
いつのまにか部屋を掃除し終え、杖をローブにしまったセブルスは、意外な言葉に呆然と突っ立ったままのわたしの腕を掴む。
「我輩の恋人であることをお忘れのようだが、いい加減ある程度の慎みは持ったらどうかね、Ms.みょうじ」
「わ、わたしには慎みしかないし」
唇を重ねるのかと思ってしまうほど顔を近づけてくるセブルスに戸惑いつつも、どもりながら言い返すわたしに、セブルスは唇を吊り上げた。
「では教えてしんぜよう…。ベッドの上で我輩の恋人がどれほど貞淑さから程遠いのか」
こいつ!なんだかんだ言って、ベッドのお誘いをしたかっただけなんじゃないのか。
そう思いつつも、ひょいと横抱きにして連れ去る恋人に、胸のときめきは止められなかった。
誕生日の次の日中、腰の痛みにまるで老婆のような歩き方になったのは言うまでもない。
嫉妬した八つ当たりはベッドの上で、が定番になっている教授。