月と妃と人質と。7






時は少しだけ遡る。
<アルファン>と<ルーベンス>の戦争を目前にひかえたルヴレイ家の一室。
重厚感あふれる家具に囲まれ、プラチナブロンドが眩しい美しい男とそんな男をきつく睨みつけるがっしりとした体躯が特徴の男。

「あれ?怒られるのかな?」
ロナルドはくすりと笑う。
「シュラは気づきはじめてるぞ。」
バルドが咎めるようにロナルドを見た。
「・・・・気付くようにしているんだよ。賢い私の可愛いシュラリーズが気付かないはずがないだろう?」
そう、シュラは可愛い可愛い私の子どもだ。


そう・・・
シュラは

「何よりも大切な私の子どもだ。」


シュラさえ幸せになってくれれば、それだけでいい。
それに
この世界の為にもシュラの紫の瞳を今度こそ守らなければいけない。

「ただの戦争なんかに巻き込むものか。
それならば、こちらも利用するだけだよ。」
ロナルドはぐっと拳に力を込めた。
そんなロナルドを見ながらバルドは初めてシュラに会った時を思い出す。




「ほら、シュラリーズ。お父様の後ろに隠れていないで、お父様のお友達にご挨拶なさい。」
ロナルドと同じプラチナブロンドはふわふわと波打っていた。
こそこそとこちらを窺っている様子のその姿は何とも可愛らしい。
顔が見えないのは残念だが、自分は体格が大きく強面のせいか子供うけはよくないのだ。仕方ないことだ。
「はじめまして、シュラリーズ。俺はバルドという。」
しゃがんで、ロナルドの体からはみ出しているプラチナプロンドを優しく撫でた。

「・・・はっはじめまして。シュラリーズ・ルヴレイです。」
父のズボンを掴みながら、挨拶をする子ども。
親友の子ども。

それだけではなかった。

(紫の瞳・・・・。)


紫の瞳は至高の輝き。
どんな宝石も敵わない。

紫の瞳は平和の証。
調和への可能性を秘めている。

紫の瞳は真の王者のもの。
手にすること、すなわち世界の覇者となる。

紫の瞳は至高の輝き。
月の導き。


世界に伝わる伝説だ。
歌い継がれる伝説。


(こんなことって・・・・。)

「ロナルド・・・・。」
縋る様に親友を見つめると、親友は愛おしそうに我が子の頭を撫でた。
そして我が子に退出を促した。

「バルド、私は・・・・。


いつか、この国を滅ぼそうと思う。

今度は奪われるわけにはいかない。殺させない。
この子を幸せにしてみせる。

お前はそのために働け。いいな?」


その命令に胸が震えるほどの歓喜を覚えた。
ロナルドの為に働ける。
そして、この美しい至高の輝きを守れる。


「御意。」
一度紫の瞳を手に入れた男の命令は、なんとも甘美だった。
世界を平和に導くはずだった男の決意をみせられた。


「真の王者は兄ではないよ。

そして私でもない。

一体、誰が相応しいと思う?」

思案するその姿すら美しい。
何年か前までは
紫の瞳を手に入れた、この美しい男こそが世界の覇者になれると信じていた。


「シュラを幸せにしてくれる者ではなくちゃね。」
「・・・・もちろんだ。」

今はまだ誰も知らない。
ロナルドの本当の思いなんて。




あとがき。
2013.05/27一部修正





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