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『ホメオスタシスの卵』と同系列
※現代で別れた後










例えばみんなでどこそこに遊びに行って、それで最後にじゃあねって言って解散するっていうのに二人はいつも二人になるまでぐずぐずと、離れようとしなかった。

それに気付いて暫く経った頃、今度は兵助だけぶらりと会の途中で席を立ってそのまま帰ったり、三郎はといえば締めのラーメンまで後輩を引っ張っていったり、とにかく以前と同じように思い思いに振る舞い始めた。
ただ、まるっきり以前の通りかと言えばそんなことはなくて。

僕がそういう類推をしていたからそう見えたのかと思ったけども、時間をかけて観察していれば多分いつかは誰だって気が付いた筈だ。盟約みたいな信頼感がはっきり二人に通ってるって。


共犯者みたいに目を合わせて軽く頷いたり笑うだけの互いの行動は、言葉を介さない分やたらと深く見えて、不可解なくらい、苦しいと思った。

笑顔とは違う、黒々と睫毛の長い端正な目元がほんの少しだけ緩む。三郎に向けられたそれに眉が寄る。
掴みどころがないけぶる瞳がぼんやりと一人だけを追う。兵助を眺めている三郎を見ていたくない。


僕は自分を根っからのヘテロセクシャルだと思っていたから不可解だと評したけど、僕は二人の友達でもあったから、苦しいと感じるのは当たり前かもしれなかった。多分僕の苦しいは、寂しい、というのに言い換えができた。

夫が赤子に伴侶を取られたと思うような、子どもが弟妹に親を取られたと思うような、自分に同じものは与えられないと分かっているから余計にふてくされた気持ちに落ち込む。そんなちょっとしたループに嵌っていたんだろう。

嫉妬の情は兵助に感じたわけでも三郎に対してのものでもない。
彼らが間に温めて育んだものを羨ましいと思っていたんだと知ったのは、二人が重なっていた道を捨てた後のことだった。

もう苦しくないかと言えばそんなことはなくて。
寂しくて、残念で、哀しかった。










100526
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