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※タカくく、竹孫前提










「昔飴色って言葉が好きだったんだ。別にどんな色だなんて知らなかったけど。想像して楽しんでた」

「へえ?」

床に転がったままぽつぽつ呟いたら、先を促す声が机と壁に跳ね返ってこちらに届いた。振り向かない背中を見つめたまま腕を伸ばす。雷蔵がそばにいる。安心した。彼の近くにいることが何よりも落ち着く。


「いい言葉だろ? 想像力をかきたてる。匂い立つようで。しんべヱはきっとこの言葉が好きだ」

「そうだね。美味しそうだ」


飴色は定義されている。言葉だけなら無限に人を楽しませるものを、真実を知れば知識と引き換えに水飴みたいな透ける黄土色に軽い失望を覚える。
この繰り返しにより私は様々を学んだ。


人に期待してはいけない。期待したなら裏切られてもその結果に自分も責任を負わねばならない。
人に理想を見てはいけない。理想を見たならいつかは失望する。流動する人は永遠の理想にはなり得ない。

傷つきたくなかったら、離れなければ。分かっていたのに近くにある温もりから離れるのは耐え難い。ずるずるしがみついていたらこのザマだ。


「雷蔵」

「なんだい」

「君は変わらないで」

「無茶を言うなあ。約束は変わらないけど人は変わるもの。きっと一年経てば僕は裏切り者だ」

詮ない言葉に縋るよりもっと受け皿をでかくしな。

って、確かに背中が語っている。
或いはそう言っているのは自分だ。つまり私はちゃんと分かっている。

うん。そうだろう。

だって私は誰からも離れる気なんてさっぱりない。だから選択肢はもうずっと一つきりだ。



「祝福してあげたいんだろ、本当は」

「うん。しかしどこかで面白くないと思っている」

「あ、それは僕もだよ」


そこまで聞き分けなくてもいいんじゃないか、だって僕たちも友達だもの。取られたくないって気持ちはあるさ。


にこにこ笑顔の似合う雷蔵。ああ本当に、雷蔵には変わって欲しくないな。
取り敢えずの回復は出来たから、ちょっくら邪魔をしてくる。いや間違えた、小舅としてそれなりの挨拶をしてくる。
きっと兵助はタカ丸さんの部屋にいて、竹谷は伊賀崎と飼育小屋だ。

そう無碍にもされまいよ。自惚れでなくそれなりに深く想われている自覚はある。
ちょっとくらい恨まれたって、縁が薄くなるよりずっといい。










あんまり遠くにいかないで










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