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 触ってみたら意外にもちゃんと柔らかかったからびっくりした。そりゃそうか。骨ばかり目立つこのガリガリペラペラ吸血鬼でも、骨がない場所はそりゃちゃんと柔らかいはずだ。何もおかしくない。
 砂おじさんだからか? どこに触れても何だかさらさらしてるなあって思いながら、死んだように眠る砂をぺたぺた触っていた。割と長い時間そうしてたから、さすがに途中で目を覚まして、寝起きの何も分かってない目を向けられる。文句を言われる前に手を離したら、目元に何の力も入っていないぽわぽわしたそのまんま、また目を閉じて二度寝しやがった。いや別にいいんだけど。


 外国産吸血鬼だから、造形の違いはあちこちにあって、肌を晒すとそれがはっきりして、結構興味深く見てしまう。顔周辺は普段からよく見てるから分かってたつもりだったけど、近くなるといやでも実感する。だってめっちゃこっちに刺さってくるから。それはもう、遠慮会釈なくガスガス刺さってくる。何って鼻が。こいつの異様に高い鼻が。俺の顔に。高くて細身だから余計深く刺さる気がする。別に致命傷なんてレベルじゃないけども、構えてない時に不意にやられるとうわあってなるし、痛い。
 だから、どんなもんだと思って摘んでみたのだが。意外にも柔らかかった。

 二度寝の寝息に安心して、てすさびに何となくまた鼻をむにむにしていると、さすがに呼吸を妨げてしまったのか、再度目が開く。眉が寄って、若干鬱陶しそうに、険しい目線が寄越される。

「…………赤ちゃんか?」
「いや、鼻がさ」

 気になって、と正直に話そうとしたのに、手を引かれて、指と指を絡めるみたいにしてきゅっと握られた。呆然としている内に、起き抜けで多分頭パープリンになってる吸血鬼は「これで安心」みたいな顔して三度寝に入っていった。
 いや、いやいや、何でこんな子どものいたずら防止策みたいなことされてんの。俺だって軽く寝たいなって思ってたのにこれじゃ寝れないじゃん。風呂にも行けないじゃん。どうしろってんだよ……


 どうしようもないから、仕方なく、薄暗い中ただひたすら観察してみる。すごく静かに眠るから分かり辛いけど、集中するとこいつのささやかな寝息が伝わってくる。何となくその呼吸に合わせて吐いたり吸ったりを繰り返していたら、全く記憶にないままこっちもスヤァって気持ちよく寝てしまった。それはいい。それはいいんだが、目が覚めたら「赤ちゃんゴリラがおててを離してくれなぁい」って砂は鬼の首でもとったかのごとくニヤニヤしていた。いやお前だよって言おうとしてから、ぎゅって力強く握り締めてた手のひらを自覚して、死ねるもんなら今死にたいってなった。でも握ってきたのお前が先だから。真実を証明するまで絶対死ねねえ。結局信じてもらえなかったけど。

 いつかまた奴が手を握り締めてきた時に「ほれ見ろ」って言ってやりたいのだが、察しているわけでもないだろうにあれ以来全くそんな真似をしやがらねえので、俺に変な癖だけが残ってしまった。今日も鼻をむにむにしては、険悪な目で睨まれている。何か納得いかねえ話。





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