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 衣類や革製品の手入れは好きだ。掛けた手間暇の分きっちりと成果を見せる、そんな約束された充足感のため対価を払うことは一切苦にならない。父は身の回り全てを上質なもので揃えようと常に心を砕いてくれた。同時に、それらを手にしたならば保つ義務が伴うことも教えてくれた。
 例えば服。採寸して誂えたシャツは隙間なく首にフィットし、芯ある背筋を保たせ、腕の動きを妨げない。折れたウイングカラーの先まで美しいのは日々の手入れの賜物で、毎夜欠かさない洗濯とアイロンは身体に染み付いたルーティンとなっている。マントを含めた一式は血族の証明みたいなものだから、親類縁者はみな似たような姿だ。物心ついた頃に意識して周囲を見れば小物で遊んでいることに気付き、父親に手解きを願えば即日唸る程の現物を手配してくれた。タイ、チーフ、カフリンクス、手袋、靴。
 一族の力は強大で、最も幼かった愛すべきみどりごはハチャメチャに可愛がられた。与えられ続けた最上級のものを受け入れて形作られきた審美眼は、確かなものだと自負している。



「なのにここでは全く無用の長物」
「ふーん」
「拭いても拭いても毎日床に大量のありとあらゆる抜け毛、あの年中換毛期ゴリラ! 飲み差しのコップ放置するし仕事帰りは汗臭いし洗面台綺麗に使えないしパンツのセンスぶっ飛んでるし! 200年かけて磨き上げられた私の美意識が日に日に死に絶えていくのが分かる」
「ほーん」
「哀れだ……このままガサツなゴリラと暮らし続ければ、いずれ儚く新横浜の露と散るかもしれん」

 いやまあ多少のストレスは誰にでもあるし、お前、基本的には毎日伸び伸び楽しく自由に生きてるだろ。

 そう珍しいことでもないが、今夜の退治人ギルドでは吸血鬼がエプロンを着けてシェフ兼給仕を務めている。周囲から飛ぶ賛辞の声(肉汁ソース美味ぇ!)(ピュレも最高よぉーっ)に腕を振って応えつつ、何故か真っ直ぐ俺のテーブルにやって来たドラルクは優雅な仕草で向かいに腰掛け、おもむろに自慢を垂れ流したのち、猛烈な勢いで愚痴をこぼし始めた。
 食事に集中していたもんで気のない感じになってしまった俺の返しにさらに不満が募ったらしい。プンと鼻を鳴らして、行儀悪く斜めに腰掛けていた身体をきちんとテーブルに入れ直し、憂鬱そうに頬杖をつく。じっとりとした上目遣いで見られた。
 あ。これちょっと長くなるやつ。
 察したものの、美味い飯にありつけた分、多少の不利益には目を瞑ろうと考える。他の奴のとこ行けや、などとは言わない。俺はそれなりに自分の運命を受け入れているので。

「……フェチットさんも、食べるの早いね」
「まあな。仕事柄、みんなこんなもんだろ」

 頼むから普通に名前を呼んでくれ、とは訴えるほど逆効果だと悟ったから言わない。言わないことで許されたと解釈されるのも業腹だが、ここは大人になってやろう。相手は俺より世紀単位で年上だけどな。しかし美味かった。焼いた肉とソースが、もう何か、すげえコンビ感。あとジャガイモの、名前忘れたけどやわっこいトロトロのソース吸ったところがまた美味い。バター。肉汁。芋。正義。うおお最初に戻ってまた食べてぇ……いじましく皿にパンをぐりぐり押し付けて最後の一口を味わう。

「……ちゃんと見てる?」
「うん? ああ、」

 大丈夫。あんたはいつもビシッとしてるぜ。上からエプロン被っていてもシャツが上等なのは分かる。間違ってもポリエステル100%とかじゃないだろう。首元は確かに真っ白で、野郎にとってそれは結構すごいことだ。代謝が違うと言われればそれまでだが、それにしたって常に身綺麗にしているよなぁとは思ってた。毎日アイロンのくだりを聞いて納得する。
 この吸血鬼は流行に左右されないクラシックスタイルを常態としているし、何気に腰の位置が高いからパリッとしたセンタープレスのパンツ姿は嫌味なくらいよく似合う。難点は吹けば飛んでいきそうなガリガリっぷりだ、この貧相さは正直見ていて不安になる……しかしまあ、安心しろよ。ショットさんは塞ぎ込んでる奴をわざわざ腐すような野暮は言わねえ。

「今日もヒラヒラが決まってるな」

 自信満々にサムズアップして彩りに添えられただろう葉っぱの先をもしゃあと齧ってみせる。食った後に「あれこれ食っていいやつだっけ」とよぎって考えていたら、チベスナ顔のドラルクにガッと親指をつかまれる。あっやっぱダメなやつ?

「違う。皿。料理。今日のソース」
「…………」

 うーん葉っぱは綺麗だけどちょっと苦いかな! こいつは齧るもんじゃないぜ。美味かったぜシェフ、じゃ俺はこれで。

「聞いてくれる流れだったじゃん! 流れだったじゃんんん!」
「ごめん俺ちょっと持病の癪思い出した」





 そうだな。あんま見ねえでかっ込むかな。冷めちまうだろ。腹に収まっちまえば一緒だし……
 よく回る舌で喋り散らかすから分かり辛かったものの、こいつの不満の原点が見えてきた。正直苦手分野だが逃げられなかったし、意見を求められたので率直に所見を述べれば、言い終わる前にキレられた。吐き捨てるような「ムダ毛ットさんもそっちの星の住人か」から察するに、俺は今ロナルドと同じ惑星にぶち込まれたらしい。別にいいけど。
 ドラルクはプリプリしながらも「炒飯とか丼ものにまでいちいち気付きを述べろなんて言わないよ?」と多少の譲歩らしきものを見せる。

「でもね、正直、食卓には一番時間をかけてるんだ。気合いの入った作品に対しては一言でいいから何か欲しい、報われたいと思うのは悪いことかね?」
「あーなるほど。ちょっと分かった」

 いつもの制服姿を毎日褒めてなんて言わないけど、めちゃくちゃ気合い入れて考えて、でもそうと悟られたくなくて適度な抜け感も演出したデートコーデには絶対感想欲しい! そんな感じだろ?

「ギャルゲーやり込んだオタクの感想」

 ちょっと申し訳なさそうな表情で「きもちわるい」って追い打ちをかけやがる。そういうの間に合ってるから。なあ気軽に刺し殺してくんの何で? 俺わりと親切にあんたの相談乗ってるよな?



「それで、一言欲しさにギルドで雇われシェフしてんのか?」
「いやこれは債権回収というか強制徴収というか」

 どっかの甲斐性なしルド君がホットミルクのツケ払ってくれないから、マスターがカラダで払ってもらおうかって。

 そっか。すごく今更だが、吸血鬼が退治人ギルドに遊びに来てツケで飲むってどこから突っ込んでいいか分かんねえな。ただ、不服そうに訴えるその内容には純粋に「へえ」と思った。稼ぎが悪いわけじゃなかろうに、ロナルドの金銭感覚はかなりしっかりしているらしい。こいつも無収入ってわけじゃないもんなと頷いていたら、背後から「人聞きの悪い表現は止めてくださいね」とマスター。大きくないのによく通るバリトンボイスで釘を刺され、ドラルクは良い子の返事をした。ちなみにジョン君の分は既に支払われているらしい。さもありなん。え、でもジョン君カウンターで働いてっけど。そういやお前座ってていいの?

「休憩中だよ。これ以上立ってたら食材に塵が混入する」
「止めろよ……」

消化に悪い。



「ロナルドには、ちょっと荷が重くないか」

 盛り付けの美しさだとか、ソースの違いとか、料理とマッチする皿のチョイスとか、気付きとはそういうものらしい。気付くロナルドを想像してみる。「おっ。今日のからあげ、衣がエレガントだな。決まってるぜ」……そもそも俺に気付きの才能がないせいで酷いことになる。
 土台ちょっと無理な話ではなかろうか。身体をフルに活用する退治人だ、飯は美味いに越したことはないが、エネルギー源としての意味合いが大きい。呼び出されれば飯そっちのけで飛び出していかねばならないそんな稼業だ。ましてや美味いならそれだけで大満足、こう言っちゃ何だが盛り付けが雑でも全然構わない。そこんところを気を付けて見て、的確なコメントを入れるってのはハードル高めだ。俺には無理。ロナルドも同じだと思うぜ。
 訴えてみると、ドラルクもニュートラルな表情で「彼は多分おかずを全部同じ皿に盛っても気にしない」と頷いている。それは内容によると思うぞ。

「ご飯、いつもガンガンお代わりするからめんどくなって、最初からまんが日本昔話みたいな盛り方してやったら何か喜んでたし」
「それサテツも絶対喜ぶやつ」

 ちょっと俺もやってほしい。ドラルクは呆れた顔で見てくるが、いやそれは憧れるぞ。
 基本的に身体が資本の俺たちは、運動部に所属する男子高校生並みの摂取量が必要で、正直なところ質より量が優先って部分はある。いや正常な味覚もそれなりにある。美味いもんもちゃんと分かる。
 けどこいつが言ってる根本は全景を感じ取るセンスの問題だろう。悪く言うつもりはないが、正直ロナルドに求めるのはやっぱ酷だ。あいつは作家でもあるが、言葉にするのが上手くても感覚で拾えなきゃ意味がない。それ以前に、ドラルクには全然素直になれないらしいから、やっぱり無理めの話だと思う。


「……求める相手を変えてみたらどうだ?」
「ふむ。脳筋の肉体労働者ではなく、知識労働者に食わせるということかね。一理あるな。ということは、ギルドでは望み薄だ」
「帰れ」

 拡大解釈止めろ。俺はんなこと言ってねえ。
 しかしながら人の話を見事にスルーするドラルクは「さットさんありがとう、早速試してみるよ!」と勢いよく立ち上がり、そして開眼したマスターのガン見を食らって直立不動の構えを取った。ああ悪かった、帰るの決めんの俺じゃねぇな。「注文入ってますよ」のサインを認めてドラルクはギクシャクとカウンター内に戻っていく。今夜中に次のプランに移るのは無理だろう。
 さて、ちょっと毛色の変わった美味いメシの余韻を楽しみたいので、本日のクリームソーダは仕事明けまでお預けだ。一口分残っていた水をあおり、今度こそ俺はギルドを後にした。



「ダメでした」
「別に報告制じゃないから」

 俺ってドラルク専属のカウンセラーか何かだったっけ。
 何となくそういう星の下に生まれた気がしなくもないが、こっちは一仕事終えて疲れてんだぞ。テーブルに着くなり絡まれるといささかげんなりもくる。
 とはいえ別にしゃにむに拒否するほどでもない。早々に切り替えて話を聞く体勢に入った。カウンターにいたひょろい影が俺を見るなりよろよろ寄って来たのが、何だか可哀想に思えたのだ。いつもはピンと立っている耳が若干垂れているのがイカ耳の猫のようでまた哀れを誘う。ロナルドがなんのかんの言いつつ最終的にこいつを許容しているのは、こんな憎めなさによるところも大きいのかもしれない。まだ労働中らしく、よろめきながらもお冷やを出してくれた。

「ヨモちゃんなんか食事が邪魔って思ってるレベル。キャロットメイトと十本満足の区別もついてない」
「あの所長を小学生みたいな愛称で呼ぶな。脳の拒絶反応がすごい」

 そこに行くか。こいつほんとに吸血鬼?
 ちなみに他のVRC職員に打診したところ、テイクアウトの形だろうと職場に持ち込むのは衛生上の観点から避けたいと辞退され、お招きしようとしたら呼ばれなくても絶対押し掛ける所長が何を混入させるか分からないからとさらに固辞されたという。さすが。アレが上司というカオス内で働けるだけあって、みんな危機管理能力が抜群だ。

「えーと、悪い。そもそも何を求めてたんだっけか」
「……私の美意識の、発揮される? 求められる……審美眼が、ほら……」
「ふわっふわだな。あー、新横浜美術館行く?」
「デートかよ……」

 こいつ最近ロナルドに侵食されてないか? 口調っていうか、今のイントネーションまるきりあいつだったぞ。ビビる。
 そんなこと指摘してもドラルクの気分は上向きにはならない、というか間違いなく嫌がるだろうから黙っとく。かといって他に気の利いた言葉も見つからない。頭をかいて目を逸らすと、薄い膝の上で憂い顔を主に向ける丸マジロが目に入った。今日も可愛い。何も考えずぼけっと眺めていると、疲れた身体が甘いものを欲しているのか、明るい茶色の甲羅からついついキャラメルだとかメロンパンだとかを連想してしまう。そこで「あ」と思って、そのまま口にした。





「まあ焼くまではうちでやってることと変わらないけど、こんなずらっと並ぶと圧巻だし、いい気晴らしになったよ」
「おお。ほんと圧巻だわ。よかったな」
「あ、いかん! ジョンには大きい。半分にしておきなさい」

 お菓子だったらコメント出やすい気がするって提案は、結果的にドラルクの鬱屈を晴らす手助けとなったようだ。その一言だけでピンと閃いて速攻で何かスゲーの作り始めたこいつのポテンシャルがそもそもすごい。ほんと何これ。何使って描いてんの。チョコペン?

「超高級どうぶつヨーチ」
「メルヘンなクッキーだな!」
「やだ、すっごい、細かぁい。アイシングね?」
「いい匂いするよ〜」
「何入ってんだこれ? 酒?」
「ん! これスパイスたくさんね」

 わらわら群がる手にひょいひょい渡っていくのは袋入りクッキーだが、何か、アレだ、とにかくすごいクッキーだった。これテレビで見たことありますって興奮気味に詰め寄るコユキに「ペルニークと言うのです」と講釈を垂れるドラルクは目に見えて上機嫌である。持てる技術の全てを注ぎ込んだと言うだけあって、繊細な模様が全面に描かれた焼き菓子に圧倒された面々は雛鳥よろしく我先にと手を伸ばし、バシバシ写真を撮り、口々に完成度を褒め称えた。
 腕を振るった甲斐があるとご満悦のドラルクは、テーブルの間を縫って配り歩きながら滑らかに解説を続けている。曰く、クリスマスが近くなると山ほど焼いてツリーに飾るもので、中央ヨーロッパではポピュラーな文化だとか。そういや何となくイメージにあるぞ。外国のツリーって、何か白いので顔が描かれた人型クッキーがぶら下がってる感じ、するする。それの超豪華版だ。

 本場ではそのまま飾るんだろうが、貰ったそれは透明なセロファンでラッピングされていた。「食べるのもったいな〜い」とか言いつつ速攻開けて軒並みパクつく退治人たち。うん美味い……ほんと美味っ。何これ。かかってんのは普通に甘くて、生地はサクサクスパイシーで、口ん中で混ざってめっちゃ合う。何これ。え、美味っ。こわっ。
 ターちゃんは何故か難しい顔をしているなと思ったら、中に入っているスパイスを当てようと頑張っている顔らしかった。アイスだかフェンリルだか何やらファンタジックなカタカナをぶつぶつ唱えている。毒舌が強烈過ぎて分かり辛いけど、真面目なんだよな。
 作ってみたいと盛り上がる女性陣の声を聞きつけたマスターは「今度講習会やってみませんか」とフットワーク鮮やかに早速ドラルクに持ち掛けている。打診を受けた暫定講師は「乾燥させる場所と時間が課題ですな」と職人の顔をしていた。


 配給は1人1枚。お気に召したらお土産にいかが。カウンターにはこんもりと籠に盛られたすごいクッキー、脇でジョン君が値札を下げて手を振っている。さらに脇ではドラルクが「いいよぉジョンちゃん。目線こっちくださーい」とノリノリで撮影会を始めている。与えられた分を秒で食べ終えたサテツが早速寄って行って、多分弟さんにだろう、どれにしようかと指をウロウロさせていた。

 茶ぁ飲みてえなーとか思いつつ、ぼんやりクッキーの余韻を噛み締めていると、満ち足りた顔のドラルクが「あー疲れた」と隣に掛けてきた。そこまで面倒をかけられたつもりはないが「お世話になりまして」と追加のクッキーを差し出され、完全に帳消しの気持ちになる。我ながらチョロい。

「そういやロナルドはどうしてんだ?」
「先生はまた〆切をお忘れあそばしたので、仕上がるまでカンヅメにされているのだ」
「何だ。それで拗ねてたのか」
「えっなにその面倒くさい彼女みたいな言われよう! 心外が過ぎる!」

 毛を逆立てて「フンガー!」と叫び出したが周囲の喧騒に紛れたし、見た目通り肺活量も乏しいらしく、すぐにぜいぜい息を切らせて静かになった。整わない呼吸のまま「悪い子にはご褒美なしです」とテーブルに置いていた進物を取り戻そうとしやがるので、ぺんと手の甲をはたく。スナァと積もった塵をはらってセロファン袋を引き寄せ、ふと、マッドなイカレ所長も甘いものなら歓迎したのではと思う。進言する義理もないので気付かなかったことにした。

「撤回してットさん!」
「ハイハイ悪かったよ」

 いやでもそうだろ。構ってほしい時に構われなくて面白くなかったんだろ。ロナルドは基本的にチョロいし尋常じゃないお人好しだし、ドラルクは構われるよう仕向けるのが上手い。あいつに時間さえあったら多分これは事務所内で解決していた話のはずだ。やれやれ、こっちにお鉢が回ってきたのはそういうわけかと納得していると、おざなりな謝罪に鼻を鳴らしたドラルクが席を立った。忘れない内にと声をかける。

「なあ。ロナルドに今度一杯奢れっつっといて」
「え? うん」

 脈絡なしの言葉にも、自分が被害を被る話ではないと判断するや言下に安請け合いをする。すたすた去っていったかと思えば、未だエプロン姿の吸血鬼は「叫んでさらに疲れた」とカップを携え再びやって来た。茶までサービスしてくれるのかと期待したら、そこは普通にドラルク自身の分だった。がっつり休憩に入っている。おいジョン君まだ働いてんぞ。
 カウンターには、呼び込みをする招きマジロにまんまと釣られた客がたかっている。今食ったばかりだろうに、あーでもスパイスのせいかクセになる味だもんな。これはちょっと、そこらの市販品では味わえない。売れ行きは期待できそうだ。確保した褒美の品は大事に食べようと懐にしまう。



 自分で気付いているのか知らないが、こいつはナチュラルに事務所のことを「うち」と表現する。
 賭けてもいい、さっきさりげなく包まれたジョン君のお残しは多分ロナルドに下げ渡されるだろう。
 作家先生の所在について訊かれて答えたツラはといえば、拗ねてふて腐れた構ってちゃんそのものだった。


「あと、嫁さんちゃんと構ってやれよって言っといて」
「え? うん」

 どっちが払うのか知らないが、どうせ中身はホットミルクだろう。カップを傾けながら、またしても何も考えず安請け合いした吸血鬼は5秒後に意味が咀嚼できたらしい、白い霧を俺目掛けて噴き出した。あークソ、やっぱり牛乳だった。旦那が何と言おうと、洗濯はドラルクにさせることにする。





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