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 白に近い淡い水色のタイルは背を預けると予想以上に冷たくて、それは火照った体に新たな刺激をくれた。どこを触っても背筋がゾクゾクする。一人になれたら即股間に手を伸ばしたくなる。我ながら病気かと思うくらい常に発情している気がするものの、男だけが集まれば自動的に猥談に流れる年頃である。毎日抜いても足りないくらいだとカイジは心中言い訳を零す。気持ちいいことには抗わない、でもいつも何かしら言い訳をつけていた。

「あっ、は……っ!」

 音や気配が案外伝わるものだと知ったのはつい最近のことだ。とある朝、目線を合わせずやけによそよそしい姉に行為を勘付かれたのだと悟った時には、発作的にベランダから飛び降りたくなったものだ。というのにふとした瞬間に襲い来る強烈な快楽には抗し難く、羞恥心に形ばかりの躊躇を残しながらも最終的にベルトを緩める己の姿は、全く中毒患者じみている。



 派手に水しぶきを飛ばすシャワーの傍ら、泡立てた石鹸を塗りたくり、ゆるゆると立ち上がる自身を扱く。右手を規則的に動かしながら、泡に塗れた左の指先はしばらく躊躇うように彷徨った後、胸元に擦り付けられた。

「はぁ……、あ、」

 期待に震える指先で固くしこった乳首を撫でさすると、ビクビクと腿が痙攣し、手のひらに包む肉棒があからさまに膨れる。目を閉じて無心に快楽を追った。

「あっ、あっ、」

 勃ち上がった小さな粒を摘んでコリコリ揺らすと腰が揺れるのを止められなくなる。輪の形に添えた右手を穴代わりに腰を振り、絶頂に向けて動きを速めていく。夢中で淫行に耽るカイジの口端からつうと涎が垂れた。

 籠もる熱を吐き出す術を教わって以来、その悦楽と解放感なしには一人の時を上手く過ごせない。寸暇を惜しんでは一人遊びに夢中になるカイジは、唐突に湧き上がる羞恥や定期的に訪れる賢者の時に足踏みしながらも、着実に知識を取り込み、実践を重ねてより強い快楽を求め続けた。食べ物を用いては罪悪感に消え去りたくなったり、巷に流布する手法を試しては始末に困ったり、得意顔で仕入れた情報を披露する同級生のテクニックを片っ端から試しては努力を惜しまずせっせと研鑽に励んだ。

(ガキの癖に、)

頭がどろどろになるまで自分を苛めると記憶が勝手に回り始める。

(雌犬みてぇになっちまって)
(なぁ、おい)

「あっ! ああぁ、ぃ、っ」

 呼びかけられて、腫れた乳首をじゅっと吸われた。痛くされた後に舌先で優しく愛撫されるともう駄目だ。呼吸する度にはしたない泣き声が漏れる。涙や涎が勝手に溢れて握り締めた竿は泡だけじゃない滑りでぬるぬるする。思い出すだけで体の奥から弾けるような刺激が込み上げて、びくびくと腰が跳ねた。一人じゃ足りない、足りる方法を知っているだけにもどかしくて堪らない。
 脳裏に描く男を必死に追いかけながら、全部を出し切ろうと膨れたままの屹立を夢中で扱いた。

「……はぁ、」

 タイルに点々と散った欲の残り滓をぼんやり眺めて、虚しくなる。声に出すと余計に虚しくなると知っているから、カイジは心の中で呼びかけた。あかぎさん。

 早く帰ってこねぇかな。あんたとエロいことしたい。

 湯けむりに薄っすらと曇る視界の中、床から跳ね返る少し冷えた湯の感触だけを感じながら、萎えた性器をゆるゆる揉みつつ、そんなことを思っていた。










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