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 床を掻き毟る指先が傷みはしないかと絡め取れば、それは気遣いとは裏腹に堪え難い疼きを発散させる術を奪う結果となったらしい。絡め取った肢体の、今や自由になるらしい唯一の首を左右に振って、無意識にか拒絶の言葉を吐き出した。

 合間にねじ込ませた腰をきつく挟んでくる下肢は動くなと言うのか逃すまいと言うのか正直計りかねた。眉根を寄せて否定的な科白を吐く癖に突き上げる度漏れる呻きだか喘ぎ声は確かに歔欷の声だ。いずれにせよ加減する気はないからどちらでも構わないと思い直す。ぬるついた内側を擦り上げてぐっと押し込む度に合わさる、尖った腰骨が痛む。女相手に感じた覚えのない骨ばった感触は痛覚と合わせて別な部位にも刺激をくれる。小刻みに揺らしていた律動を早めていく。吐息混じりに漏れる鳴き声に脊髄をピリピリしたものが幾度も駆けた。闇の中でも淡い星明かりを集めて弾く白さを眼下に愛でながら、後は愉悦を追うことに集中した。







 いくら馴れてきたとはいえ痛みを覚えない日はないし、だからだろう、そういう風にできていない体はいつになったってその瞬間竦む。最も元々が恐怖の対象なので何に震えているのか時々自分でも分からなくなるのだけれど。
 ただ日頃生物というものを軽く超越するかのようなこの存在が、行為の間は妙な現実味を見せるところが不思議で奇妙で何だか嬉しい。こんな時は瞬きさえも可愛らしく映る。

 荒い息遣いに自分の呼吸も乱れる。焼けそうに熱い皮膚が触れた部分から自分の肌は焦げていく。体があっという間に頼りないものになり果てて、圧倒的な濁流に呑まれた枯れ葉のように翻弄される。抗う素振りさえ許されない力に振り回されて、揉まれて、最終的に千々に千切られる。

 助けを求めたくて触れるものには何にでも縋りたい。床を掻いていた指先を掴まえられて一層頼りない心持ちになる。揺れるに任せていた脚を腰に回してもまだ足りず、捕まった指先でもがいた末に己を拘束するその手に縋った。そうして一瞬の間を置いて握り締められ絡む指を、自分はやはり何だか嬉しく思うのだ。










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