Others | ナノ




 自分ばっかりだ。彼は項垂れて、そんな弱腰なことを呟いている。ファンの子たちに見せてあげたい。己は声を出さずに笑い、そんな意地悪なことを思っている。まったく、どこをどう見たらそう思えるのか。どうしてそんな弱気になっているのか。下敷きにされたまま、重くて、息苦しくて、汗やら何やらにまみれた身体がべたべたする。でも死ぬ気は全くしない。この間のキスは丁度いい肩慣らしになったかもしれない。既にそれなりの量を取り込んでいるものの、まあちょっとカッカするかなってくらいだ。息はまだ整わず、喘ぎ混じりの吐息が部屋の空気をどうしたっていやらしく染める。

 このロナルド様に任せておけって、自信たっぷりの振る舞いは人々に安心感を与えるだろう。デモンストレーションだ、周囲に作られたイメージだ、外向きの外装だ。別に口に出して言いはしないが、内心で散々に評している。でもまあ、中身の一番外側でもある。背伸びしまくった上っ面だって、彼の一部には違いない。だのに芯の部分にはいつだって自信を持てずに不安がる若者がいて、それが可笑しくて、健気で、どうにも可愛くて堪らない。自力で頑張る強さがあるから概ね放置しているが、時々、無性に撫で回したくなる。慰撫して、甘やかして、たくさん褒めてあげたくなる。
 可愛いな。可愛いね。
 思うままに言葉にしたいのに、それを口にすると相手はちょっと、いやかなり、嫌がるのだ。それでも、言いたい時は言う。私の可愛い退治人くん。もっとよく顔を見せて。
 背に回していた腕を緩めて、口にしたら、やっぱり嫌そうに唇をへの字にして、けれど黙って顔を上げてくれる。嬉しくて、撫でるように髪に触れた。もっとあちこちを撫でて慰めたいのに、どうにも窮屈で、手を動かせる範囲が限られているのがもどかしかった。
 情けなく下がった眉がらしくない。少しだけ垂れた目尻は甘く、閨にいる時はそこが熱っぽく赤く染まって、ひどく扇情的なのだ。波は引いて、鎮まりかけていたのに、眺めていると刺激され、色んなものが湧く心地がする。奥が疼く。意図せず含んだものをきゅうと締め付けてしまい、端正な顔貌が痛みに耐えるように顰められた。胸元に擦り付けるように顔が埋められ、ああまだ見ていたいのにって惜しむ気持ちになる。もう自力ではどうにもなりそうにない。身体を倒してくる男に圧されて、息が深く吸い込めない。浅く、短く、何度も息をして、それでようやく胸が落ち着いてくる。おかげで「ちくしょう」って小さく呻く声もよく聴こえてしまい、おやおやと思う。傷付けてしまっただろうか。
 汗でしっとり濡れた背中を撫でて、自分の手とそう変わらない温度に寒くないか尋ねると、しばらく沈黙した後に「お前は?」って言う。君が布団になってるから寒くないよ。熱いものを飲んだばかりだしねって、それは言わないでおく。ああ、自分が末端まで温かくなっているんだと、そこでようやく気付いた。

 ごろごろと懐く頭を眺めていると、銀色の熊みたいだなあとそんなことを思う。さすがは退治人と言うべきか、軟派な見た目からすればちょっと意外なくらい体幹がしっかりしていて、そんなに体格に差があるわけじゃないのに、体重を掛けて抱きついたってちっとも揺らがない。組み敷かれ、重力まで味方にされると、本当に、全く抵抗できないくらいに圧倒的だ。重く、大きく、のし掛かるそれは、けれど全く不快じゃない。潰されているのはこちらなのに、払いのけられるのを怖がるように何をするのにも伺いを立ててきて、可愛いったらありゃしない。胸に、首元に、頬擦りをするみたいに、それにしては乱暴に、ぐりぐりと頭を擦り付けてくる。どうにも獣じみた動きにやっぱり撫でてあげたいという思いが湧いて、再びしっとりした銀色に触れる。ぴたりと動きを止めたから、これ幸いと撫で付けて、耳元を擽るようにかき上げて、引き寄せるように力を込めた。キスしたい。もう何も言わなくとも、向こうは察したように被さってきた。

 ん。ふ。ん。我慢しようと頑張っても息と一緒に声は漏れて、それがまたどうしようもなく濡れている。滴るような欲情にまみれている。触れてくる唇は恐る恐るといった風に拙く、ただ押し付けられるだけの幼いもので、その不器用さに、反転してのし掛かって奪うような口付けを施してやりたいと、そんな荒っぽい欲求が湧く。抑えが利かない。息が上がる。興奮する。酔っているのか。酔っているかも。貰い過ぎたそれがどうにも体内で渦巻いて、胎を灼いて、疼かせる。沸き立つままに想いがポロッと零れ出して、ひとたび溢れたら、もう止まらなかった。
 好きだよ。大好き。
 情欲と、それからふんだんに好意がまぶされた甘い音。唇が擦れ合う距離で、中に注ぎ込むように好きだと繰り返す。自分ばっかりなんてそんな馬鹿なこと。君は一体どこを、何を見ているんだ。私が余裕綽々にでも見えているのか? とんだ誤解だ、思い知れ。
 バカみたいにずっと好き好き言ってたら、強制的に言葉を奪われた。食らい付くように被さってきた口を受け入れようと懸命に応える。尖る牙で傷付けてしまわないよう必死に開いて、いっぱいになりそうな分厚い舌を迎え入れ、互いになぞり合う。吸い過ぎてしまった分を、分け与えられたらいいのに。彼が言う特訓の2文字はあまりそそられるものではなかったが、今は存在感を増して頭をぐるぐると回っていた。君が付き合ってくれるなら、やってもいいよ。そんなことを思う。だんだんと苦しくなってきて、息が上がっていく。察したのか、離れようとする、その引いていく唇が惜しくて、少しキツめに吸い上げた。ああ、もう首が限界。完全に力が抜けて、頭をシーツに落とす。縋るように銀色を抱え込んでいた手のひらを引き締まった頬に移して、ちょっと苦しそうにしている可愛い男の顔をじっと見つめる。艶やかに濡れた唇に目が吸い寄せられた。やり過ぎたかもしれない。やけに腫れぼったくなっている。上手に継げなかったのかひどく息を乱して、顔中真っ赤だった。

「……お前、きつくねぇの」
「ん?」
「からだ」
「うん? 大丈夫だよ」
「……ちょっとは、頑丈になったかよ」

 ああ。まだ気にしてたのか。
 もうすっかり忘れていたが、思い起こせば今夜、私はなかなかに酷かった。さあやるぞって瞬間に死なれたらそりゃ嫌だよな。随分と気を遣わせていたらしい。大丈夫。もう、大丈夫だよ。とっても元気。元気過ぎるくらい。上からも下からも、久々にたくさん貰えて、多分すごくハイになってる。ちゃんと分を弁えていたつもりなのに。私のものだなどと浮かれている。まあいいだろう。きっと今だけはいい。今は、今だけは、全部私のもの。全部を私に写し取って、残しておかないといけないし。

 なったなった、元気だよって軽く言ったら、何やらもじもじ躊躇った挙げ句「まだしたい」って悔しそうに言われて、何を気にしていたのかやっと理解が及ぶ。それで言ったら私のが先に堪えきれなかったんだけど。

「ああ。ごめんね。気持ちよくって……出ちゃった」
「んんっ。あっ そぅっ、か」
「うん……すごく久しぶりだったから」

 君の、おっきく膨らんだのが一番いいところ擦ってきて、我慢できなかった。
 既に内側にあるものに再び血を送ろうと、じわりと締め付けた。恥ずかしげもなく腰をくねらせて扱く。向こうも動きに気付いて、ぐっと根元まで腰を押し付けてきた。中で跳ねるものは順調に圧迫感を増している。きもちいい。正直に告げれば、呼応するようにびくびく暴れた。浮かされた頭で、してほしいことを、思い描くまま声に連ねていく。
 膨らみきった、張り出した部分で、たくさん中を引っかいてほしい。みちみちに埋めて、中をいっぱいにしてほしい。反り返った弾力ある楔を奥まで打ち込んで、ごりごり擦りながら抜いて、乱暴なくらい激しく抜き差しして。
 それに合わせて腰を振れば、死んでしまいそうな法悦が得られることを知っている。思い起こして、待てなくて、頭の中でなぞり返した快感に背筋が震える。身体に巻きつく腕に負けじと背に腕を絡め直した。ぎゅっとしがみつく。

「あぅ、ぅんッ、ん、ふぅ、」

 抱き合ったまま腰を揺すられて、打ち付けられる間隔が少しずつ速まっていく。悦いところを何度も擦られて、みっともないと思うのに、よがり声が止まらない。止められない。きもちいいって、息に混ぜて囁く程度だったのが、いつの間にやら叫ぶみたいに何度も訴えていた。散々によがって、気が付いたら長いストロークでがんがんに揺さぶられて、押し出されるように腹に精液を零していた。汗が落ちてくる。苦しそうな、傷付いたような、凄艶な表情に見下ろされながら繰り返し繰り返し、串刺しにされる。全身が揺れるくらいの勢いで、それなのに、眇めた目が、鋭い目線が刺すような強さで当てられるのは分かった。肌がチリチリする。逃れたくても、せいぜい首を振って、身を捩る程度で、そんなこと何の意味もないし、絡む手が、腕が、余計に力を強めるだけだった。熱い杭に中を焼かれて、真っ直ぐな目に肌を灼かれる。どうにかなりそうだった。もう、なっていたかも分からない。だって、多分まともじゃなかった。いい、きもちいい、もっとして、いっぱい突いて。他にも思い出せないくらい散々、普段なら絶対口にできないようなことまで垂れ流して身悶えていた。
 触れられもしないのに性器は完全に形を変えて、胎の中を擦られては揺れるその度に露を飛ばして震えていた。爆発するような解放の瞬間を引き延ばされて与えられて続けているような、オーガズムの感覚に近いけれど意識はずっとはっきりしていて、それでかえって羞恥が残る。見苦しいと理性に罵られながら欲望を垂れ流すことに耐えられず、せめて散らばるそれを抑えようと性器を捕らえて押さえ込んだ。向こうからは、恥ずかしげもなく慰め出したと見えたかもしれない。抽送の勢いのまま引き抜かれて思わず声が上がる。ぽっかりと開かれたままの中が空気に晒され震えた。閉じる間もなく転がされ、背後から再び押し入られる。遠慮も容赦もなく、一息に根元まで突き入れられて、長く掠れた悲鳴が勝手に喉を震わせた。初めはぴったりとくっついていたのに、気が付いたら身体は離れて、腰だけを抱え上げられて、だからひどく激しく揺さぶられて、擦れる刺激が強過ぎて、必死で唇を押さえても嗚咽が喉から零れていく。際まで勢いよく抜き出しては間髪入れず押し込んでくる。何度イったか、もうよく分からない。突かれても引かれても、その都度軽く達している気がした。
 可愛いんだけど、それは確かなんだけど、熊は立派な肉食獣で、初めは互いに戯れのつもりだったのが途中から割とこっちの命に関わる事態になるのはよくある話だ。とんでもないものに手を出したのかもしれないって、こうした夜はよく思う。同時に、拾い物だったなぁとも思うのだ。何とも面白い二律背反。
 頭がクラクラする。激しく揺さぶられるせいだ。だんだんと意識が剥離していく。身体の感覚だけが研ぎ澄まされて、振り回されるそれに背が撓う。脚が跳ねる。喉が勝手に啼き声を漏らす。意識はそれを統制できない。茫洋と、思うだけ。応えてあげたい。何だって与えたい。そうして、守らなきゃいけない。訴えられたこと。想いを告げるばかりで、応えてくれとしか求めなかった男が、今夜は願ったから。

 朦朧とする中でも、陽光のように深くまで射し込み刷り込まれた禁忌を破るまいと、それだけは溶けていく意識の中でもずっと鮮やかだった。今夜何をされても咄嗟に止められなかったのは、そのせいだ。嫌とか駄目とか言っちゃダメ。自分でも驚くくらい、その禁則に縛られていた。





 随分と欲求に正直な姿に、多分引きずられていた。
 あんなに出し渋っていたくせに。解禁したらキス魔になるとか聞いてない。腹でひとりえっち始めるし。やけに具体的におねだりするし。イったばかりのやらしいツラで大好きなんて言い出すし。殺す気かって思った。それか死ぬ気かって。お前のこと死なせちまうって。際限なく煽り立ててきて、だからこっちだって欲求は爆発しそうに膨れ上がっていた。活火山みたく豪快に出してしまいたいのにひとつしかない出口は本当に小さな穴しか空いてなくて、雲霞のようにひしめく欲望をとても上手には逃がせない。堪らず、全部相手にぶつけた。
 せめてもっと感じさせたい、気持ち良くさせたいって思う。ぬめる内側を擦るだけではきっと足りないんだろう。雄をずっぽり咥え込みながら自身の性器に手をかける奔放な姿に、細い血管が何本犠牲になったか分からない。ひっくり返して、後ろから突き入れて、感じる部分をありったけ触ってやりたくて、胸元を探る。すぐに行き当たった固い粒を指の腹で潰せば、内側がきゅうんと絞り上げるように痙攣する。喉が反らされて、甲高い啼き声が甘く響いた。震える背に張り付くように重なって、固く勃ち上がった胸の尖りを捏ね回す。囁くように、声が何かを訴えていた。それが耳に届くのには時間がかかって、ようやく認識できる頃にはもう悲鳴に近かった。

「アッ、はなして、そこ、一緒、しないで」
「ねえっ、イっちゃう、もう、ムリ、いくっ」
「死んじゃう、おねがい、よすぎて、もぉ、死んじゃうからぁっ!」

 主張されても、内側はもっとしてと言わんばかりに悦んでうねり、さざめいて、内側に満ちた性器に震えながら絡みついて離さない。突き出すように尻が揺れ、勃起しきった反り返るものに押し付けてくる。肉体の求めに応じることに大部分の力を奪われて、だから言葉の意味を捉えることは、もう途中で放棄した。摘み上げたままの突起をくにくにと指の腹で揉みながら、腰を揺らめかせる。重なっていれば大きく出し入れはできず、代わりにゆさゆさと腰を前後させた。あっ。あっ。あっ。応えるように延々と尻が振られて、打ちつけ合うその快感が強過ぎて、もっと快くなりたいと身体が先を先を求める。気が付いたら細い腰をつかんで、小さな尻に張り詰めた下腹部を滅茶苦茶にぶつけていた。
 ずっと続けていたいのに、込み上げてくるものがもう近くで蟠って燻って、もうじき来てしまうと分かる。泣き声が狂おしいまでに激しくなる。締め付けは不規則な痙攣に近く、しがみつくように締まり、うねる襞にもう意地で抵抗していた。涙声が揺れる。震え声が必死に告げてくる。イく、もうイく、悲鳴じみた相手の声に混じって、自分の呻きにも耳が犯される。息と一緒に声が漏れるのを止められない。食いしばっていた歯の隙間から獣じみた唸りが漏れて、それでも最後の最後まで緩めずに、悦ばせたい一心で堪えた。

「あッ、あ、あぁぁぁ……っ」

 一緒に振りたくられていた尻が止まって、びくんびくん上半身まで激しく揺れている。髪を振り乱して、鼻を啜って、涙ながらに喘いでいる。堪らずに、動きを止めた。全身に力を込めて耐える。耐えることが、快感になってきている。これ癖になったら不味いんじゃないのか。掠める懸念はすぐにどこかへ溶け消えて、絶頂をやり過ごしたと分かったら再び緩やかに動き始める。ペースは落として、ねっとりと腰を入れた。息は苦しそうなのに身体は感じ入っていて、快さそうで、だから止めなくていいと判断した。胎をひっかくようにずるりと引いて、何度押し入ってもぎゅうぎゅうと絞られ狭く閉じる道をしつこく割り開く。言われた通り、死んじまいそうだと思う。死にそうに気持ち良い。自力では止められない。延々と腰を振って、それで死ぬならもうそれでいいって思う。
 見下ろす身体はぴくぴく震えて、譫言みたいに「止まらない」って囁いている。イくの、とまんないよ。そんなことを言うから、確かめたくて、また背にぴったりと張り付いて前に手を回す。震えるものはもう随分と柔らかい。それなのに、出が悪いポンプのように、先端からぴゅるっと僅かに噴き出すものを切れ切れに感じる。多分本当に、ずっとイってる。中がずっと、締まりながら痙攣するようにうねっていて、強い快楽にどうにも意識がぼやけてしまう。唾を無理矢理飲み込んで、カラカラの喉を湿す。抜くぞって形ばかりに声を掛けて、届いたかも分からないまま腰をずるりと引いた。掠れた悲鳴と凄まじい摩擦に、全身を硬直させて耐える。耐えられずに軽くイって、自分の意思でなく跳ねるそれが独立した生き物のようにも感じて、何だか空恐ろしくなる。

 宛てがい、見計らって、もうすっかり馴染んだ中に突き入れる。再び正面から腹を合わせていた。沈めて、ぴったりと吸い付いてくる肉襞に大きく息を吐く。身体を折って屈み込み、大きく上下する胸に舌を這わせた。指より舌の方が反応が激しい。それでも敷く体勢では、一緒に中を快くしてやれない。抱え上げて膝に乗せようと半身を起こさせたら「待って」って悲鳴を零す。仰け反って身悶える身体をあちこち撫でて、摩って、宥めた。舌先で胸の先端を嬲ると、全身を緊張させて啜り泣く。縁が咥え入れた雄をきゅうきゅう締め付けてくる。はっきりとした反応に気を良くして、音を立てて吸い付いて、舌で転がし歯を立てた。唇で扱いたまま腰に力を込めて、下から軽く突き上げる。抵抗するように一時捩られた身体は、重ねて与えられる悦楽にやがて陥落して、再び自ら腰を振って応えた。声が涙に濡れていて、実際にぼろぼろ泣いていて、舐め取ってやりたいけれど無理な話で、ひどくもどかしかった。
 もう、出したい。全部内側にぶちまけて、一番奥まで擦り込んでやりたい。このまま膝の上で揺さぶろうか、寝かせて突きまくるか、少しだけ迷って、迷いながらも腰を回すように波を送る。しつこく吸い付いていた部分は随分と赤みを増して腫れ上がり、息を吹きかけただけで泣き声が酷くなった。子どものように泣く身体を楽にしてやりたくて、クッションに寝かせてやる。溶けたみたいにぐたっと横になって、腕も脚も全く力が入っていない。あと少しだけって謝る気持ちで、それでも動きは全く容赦なく、追い込んでいく。突き入れる度に跳ね上がる手足に、腹に、性懲りもなく欲情していた。
 言い訳になるけれど、いつもだったらイくって言うのに、来ちゃうって細い声が懸命に言うのがほんの少しだけ気にはなっていた。けれど何のことか分からずに、正直もう構ってやれる余裕がなくて、だからイくってことだろって納得して、そのまま勢いを緩めることなく腰を振った。来ちゃう、出ちゃう、待って、待って。涙声が止まらなくて、でもこっちも止められなくて、だからガンガンに腰を打ち付ける勢いそのままに、漏れ出すものが飛んだって、最後まで止めてやれなかった。

「あぁっ、も、出ちゃうっ、出ちゃうのにぃっ! あ、ぁ、あッあッ……あああぁ、あッ」

 精液とは違うとすぐに分かった。
 喘ぎながら、見ないでって、嗚咽に近い声音が訴える。覆うように当てられた手の甲斐もなく、噴き出したものは互いの腹を湿らせて、しぶくように散らばったそれが密着した身体の間を縫って落ちる。揺さぶられながらも痙攣するようにがくがくと全身を跳ねさせて、だから隠そうと伸ばされた手のひらはほとんど役目を果たせなかった。何度となく霧雨のように散らされるものに掠れた悲鳴を上げて、ひっ、ひっ、苦しそうに息を繋いでいた。そうして全部を吐き出してしまう頃には、ただ震えていた。薄い胸が激しく上下して、しゃくり上げるように泣く。粗相をしでかしたと、居た堪れなさと恥ずかしさに、言葉を失くしてただ目を閉じて泣いていた。
 呑み込ませた性器ごと、腰ごと、引き込まれてしまいそうだった。熱く絡みつくものにねっとりと包まれ、扱かれ、目の前にチカチカと光が散った。耐えられなかった。跳ねる身体と不規則にうねる襞に引き絞られて、ただ呻いて、腰が跳ねる度に精が飛び出していくままに任せた。吐き出してしまってからも、悦楽というには暴力的な刺激に喘ぐように息をついて、そこで同じくらい息を乱して泣きじゃくる相手にようやく腕を伸ばせた。何で泣くんだって思う。泣くなよ。泣くことなんてなんにもない。
 倒れ込むように身体を預けたら、今度は「重い」と泣かれた。どうしてもしたくて、唇を合わせようと顔を覗き込もうとしたらイヤイヤと首を振られて、うっかり色んなものが臨界点に達した。

「あっ」
「ちゅーさせろ、バカ」
「アッ、もう、もっ、ムリ、」

 まだそんな、ただぴくんと中で震えただけだ。胎で動いた、たったそれだけで顎が反らされ、掠れた声で無理だと訴える。人間に酷い目に遭わされたばかりの獣のように、やけに過敏に反応する。
 口付けが欲しくて、でも背けられて、代わりにと晒された喉に柔らかく噛み付いた。急所を押さえられた恐怖と紙一重の刺激にか、まだ咥え込んだままの縁が悦ぶようにひくひく震えた。ムリじゃねぇだろ。吐息を浴びせるように首筋を舐め回して責める。頭のどこかでは、何かが引っ掛かっていた。自分が何でこんな元気なのか。ちょっとおかしいと思う。だって、アレだろ。わーって吸われるはずなのに。その割にいまいち引いていかない獰猛なこの欲求は何だ。俺が若さ真っ盛りの性欲魔人だから? えっそんな酷くないだろ。尖った顎に吸い付いて、あううと戦慄く唇を見る。飽和状態ならもう吸えねぇのかも。そう思って、今度試してみようと思う。今日は、もう別のことで忙しい。少しだけ擡げた頭で感じる中が、奥が、さっきからずっと、それ自体が生き物のように激しく蠕動している。今抜き差しをすれば、得もいわれぬ快楽だろう。色んな刺激に多少は回復していたから、本能のまま動いて、そうしたら、悲鳴と称するにはやや物騒な、掠れた絶叫が夜を揺らした。言葉になったのは「待って」とただそれだけで、後は本当に叫び声だった。獣のように叫んで、やがて声が枯れても、腰を入れる度に折れそうに仰け反った身体は痛々しく張り詰めて、爪先までがぴんと反り返る。どう見ても普通じゃない。分かってるのに、分かってたのに。人間は、強烈な快楽に逆らえるように出来てない。食い付かれる襞を振りきって、ぬめらかな肉を先っぽで抉る、行き来するだけで得られる鮮烈な快感に抗えなかった。多分、向こうも同じだ。どんなにへとへとでもきっと逆らえない。声にならなくても、喉を擦り合わせるような鳴き声はずっと続いてる。薄っぺらいせいか、色んなものが小作りで、多分中だって元々狭い。ぎゅっと全部が締め付けてきて、そうして縁は特に強い。引き攣るように不規則に戦慄くそこに食い千切られそうだった。自分でも制御できないのだろう過敏な感覚に振り回されて、可哀想なくらい泣いている。こうした時は譫言めいて呟くのが常だった。それなのに今、イヤともダメとも決して吐かず、それが自分の訴えを聞き入れているからだと炙られたように熱い頭でも途中で思い至って、ますます猛り立った。
 風邪で浮かされていた時の感覚に似ていた。頭は靄がかかったようで、なのに他の部分は鋭敏に尖りきっている。刺激をモロに受け止めて、拾い上げて、貪欲に全部を味わおうとする。もう本能だけで動いている、そんな状態でも、身体を折るように震わせて、苦しそうに息を詰まらせる姿にはさすがに止まった。シーツに崩れ落ちて、目元も耳も指先まで、薄い皮膚のあちこちが赤く色付いていた。熱にうなされるようにぜいぜいと、喘ぐように息を漏らす。気遣ってやりたいのに、言葉が出て来ない。できたのは腕を緩めてやるくらい。頭を垂れて、息を落ち着かせようと努力した。荒い息の合間にも、ぐすぐす鼻を啜って囁くように訴える、揺れる声はちゃんと聞こえた。
 こわい。
 知らない。
 こんなの知らない。
 ひ弱な身体が、過敏になり過ぎた感覚に振り回されていた。全身の神経を剥き出しにでもされたみたいに怯えていた。怖がっていた。限界だと訴えて、やめてほしいと請われた。お願いって泣いていた。
 意志を尊重するべきだと分かっていた。けれど、知らないって、こんな思いは初めてだと知らされて、それが例えようもなく嬉しかったことを、こいつが理解してくれるかどうか。何をどう頑張ったって、既に重ねられた年月を人の身で越えられるわけもない。ほぼ全てにおいて導かれて、教わって、なぞるように真似をしてきた触れ合いで、己が初めて何かをもたらせたって、それはこれ以上ない勲章なんだと果たして理解してもらえるか。言い訳にしかならないと自覚していても、止められなかった。これ以上はムリだと怯える声に、大丈夫、大丈夫だからって、ただ繰り返すことしかできない。何とも可哀想なことに、こいつは今正に自分を責め苛む元凶にしか助けを求められない。縋るように見つめられて、憐憫と劣情とで意識が揉みくちゃにされた。

 もう一緒に動いてはくれない。ぐったりと力の抜けて、薄いとはいえそれなりの手応えがある身体。全てを預けられて、抱え込んだ腰に腰をぴったり重ねる。波のように、内側が開いては閉じ、時折きゅうと引き絞るようにきつく締め付けてくる。強い抵抗を感じながらもゆったり引けば、ぴくぴくと小さくあちこちを震わせて感じて、緩やかに入っていけば身体を反らせて大きく跳ねる。引いても突いてもイってるような、過激な反応をする。ぐっしょりと濡れた下生えが絡む性器はずっと項垂れていて、それでも、尋常でない動きを返す胎が、びくびく痙攣する脚が、反らされる爪先が、何より蕩けた表情が、忘我の淵にずっとあることを示していた。引きずり回すような、こんなに一方的な抱き方をしたって、どこまでも快楽を得ている夜の生き物。
 また、少しずつペースを上げて、出し入れする。きつく収縮する肉筒が扱くように襞を震わせる。腰を揺らめかせれば感じる悦楽はさらに膨らんで、もっと速く動かしたいという欲求はどうしても抑えられなかった。せめてちょっとずつって、そう思っていたのに、短い往復はすぐに際まで引き抜いては最奥を穿つ長いものとなり、穏やかだった律動はベッドが軋むほど激しいものに変わる。

「はァ、ぁ、っ、ぁ、ひッ、」

 揺さぶられるだけの身体は、ただ身悶えて、啜り泣いていた。後から後から溢れる涙が喉を詰まらせて、咳き込む度に抉れた腹部が不規則に跳ねていた。千切れんばかりに食い締められて、そこを無理矢理引く時の痛みに近い強烈な刺激。与えられ、内側に入り込んで、頭蓋の天井にまで達した快感が、溜まるばかりでちっとも出て行かない。全部ぶつけてしまいたい。そんなことをしたら殺してしまうと、掠めた想像に、それはそれでいいかもしれないと思う。最期の瞬間まで自分を感じながら、そうして死なれる。まともじゃないと自嘲して、けれどもあまりに強烈に心奪われる想像に浸りながら、もう指先ひとつ己の意志では動かせない身体を押さえ込んで、いじましく擦り付けて、込み上げるものを最後の最後まで注ぎ入れた。収まったと思ってもしつこく腹が震える。ゆるゆると腰を揺らしてしまう。下敷きにした薄い身体は小さく跳ねるだけだった。
 壊れそうに揺れていたベッドがすっかり沈黙してしまっても、整わない息が淫靡に籠った部屋の空気を揺らす。燃えるような身体の熱さを持て余したままぎゅうぎゅうに絡みついて、歪な一塊の生き物みたいにぴったりくっついて、ただ息を繰り返して思っていた。死ぬなら今死にたい。










 せんせい。せんせい。
 あなた、もしかしてちゃんとわたしのこと考えてくれていたんですか。めちゃくちゃ厳しくされるから、ああこのひと絶対わたしのこと嫌いだ、わたしだってわたしにばかり厳しいひとなんて大っ嫌いですって、本当に子どもっぽい意地を今の今まで張り通していること、ほんのちょっとだけ反省しています。

 自分の意思は全く反映されず、いつの間にやらそういうことになっていたのだ。勿体つけた言い回しが嫌味だし、キザなとこが鼻につくけど、まあ何やかんや色々してくれる世話焼きなおじちゃま。若干ナメていた。若気の至りで世の中の大半のものをナメていたから仕方ない。父は今生の別れとばかりに泣いていた。師と仰ぐよう言い含められ、生まれて初めて家を出ることになり、そうして優しいおじさまとの関係は一変した。厳しくあろうと向こうも努力していたのかもしれない。今だからそう思える。その時はそれはもう、何故私がこんな目にと悲劇のヒロインぶって嘆いたものだ。
 血族に連なる者としていかに生きるべきか基本の全てを叩き込まれた。もしかしたら根気よく、その当時の感覚としてはねちっこく。立居振る舞いや言葉の作法から、スコーンに大きな狼の口が開くコツまで、それはもう幅広く。

 酷い叱責を受けたことがある。まあ何をやっても大抵があちらのお気に召さなかったようで、ネチネチと嫌味を言われるのは日常だった。ただ、真剣に生々しい怒りをぶつけられたのは、後にも先にもその一度きりである。
 本気でないのに本気であるように思わせるなと。それはそれは酷い打擲で、怒りに任せた一撃にしか思えなかった。自分の思い通りにならないから打ったんだって、幼い自分にはそうとしか受け止められなかった。最低! 信じられない! 引っ込めロートル! 高慢ちきの因業卿!
 今なら流れるように罵倒している。蝶よ花よと育てられた世間知らずの子どもは恐怖で固まることしかできなかった。だって本当に一片の容赦もなく打ち据えられた。成体になりきれない身体が、床に倒れ込むくらいの勢いだった。まあ、当然ながら塵と化していたので、代わりにすごく遠くまで広がったというわけだけど。

 口先だけの約束を未来に託すこと、安易に好意を振り撒くこと、あっさりと唇を許すこと。下手をすれば恨みを買う、悪手も悪手だと、他者への侮辱にとどまらない、自分を自分で貶め追い込む行為だと、生まれて初めてひとに手を上げられて叱られたことがそれだった。身も凍る目で、声で、考えなしの行為が何をもたらすか、延々と長広舌を振るわれた。正直、初めに頬を打たれた衝撃が大き過ぎて、その後の言葉はほとんど頭に残っていない。

 ただ、今、自分が何らかの判断を下す指針には師の影響が確かにある。寝食を共にみっちりと教育を施される全寮制極小規模校じみた生活から解放されて以来、とんでもない反動のまま伸び伸び手足を伸ばしまくった己が、それなりに酷いしっぺ返しをくらいながらもどうにかこうにか生き延びられた一因は、おそらく師に示された規範にあった。知らず知らずの内に避けることができた災厄もあったかもしれない。
 生き物としてはごく原始的で、根源的な感情だからだ。恐怖と共に刻み込まれたものは、なかなか抜けない。強い嫌悪を覚えながらも無意識に守っていた。守っていたから無事だったのかと、今更ながらに理解した。だって、こんなにも大事な相手ですら、死にたくなるほど面倒臭い。一番小さくなれる体育座りで、身を守るように丸まる。意味があるとも思えないが。


「すっげえよかった」
「殺してくれ。脳細胞までリセットしたい」
「分かった。次は死ぬまでイかせる」
「やめろ! 言葉通じてないし……君っ、君は、本気でするだろ」
「また潮吹かせるまで頑張るから」
「………………君を殴りたいと思ったのは初めてだ」
「平手で頼む」
「もーやだ! 帰る! 帰る!」
「あっ、誤解すんなよ。絶対やってほしいとか思ってるわけじゃねぇから。吹かせるくらい俺が頑張るって意味だ」
「怖いぃぃ! 言葉通じてないぃ! 帰る! おうち帰る!」
「ここお前んちだろ」
「実家に帰る!」
「オイ待てふざけんな」
「ひっ」


 恐れていたのはこれなんだろうか。刻み込まれた戒律を、破ることへの警告だった?
 けど、これは、振る舞ったっていい相手なんだ。約束も、好意も、キスも、全部捧げていい相手だ。警戒する必要なんてない。きっともうこれ以上ないってくらい本気だし、だから侮辱にはならないし、災厄が降りかかるなんてこともないだろう……多分。

 いつの間にやらコツをつかんでしまったらしい。深くまで舌を差し込まれ、熱い舌先が柔らかく上顎を撫でている。それをされるとどうにも力が抜けてしまう。迎え入れるのは少し辛い。牙を当てないよう必死で口を開くこっちの苦労を何と思っているのか、向こうは遠慮会釈なく奥まで入ってくる。大きく口を開けたまま、相手に触れて、絡めて、撫で合う。随分と物騒な声を出したくせに、触れ方は柔らかく、慎重だった。背筋を這い上がるものに勝手に身体が震える。漏れる息に嫌でもそういう色が混じる。温かく肌を包む空気に、膨れ上がったはずのストレスも溶けていく。振り向かされた体勢のせいだ、首に限界が来て、ゆるゆると振って口を離した。浴槽の中で身体を捻り、もう一度と強請る。あまりに心地良くて、色んなものが馬鹿になりそうだった。深いけれど、穏やかで、何だか一直線なキスに絆される。まあ、いいか。あれこれはっちゃけた発言も、ひとまず流してやろう。うん……それはいいんだけど、ちょっと、このままだと死んじゃいそう。これは、少し熱過ぎないか。

「……何で、こんなに熱くしたの」
「あー。意識ない奴洗うの初めてだったし。時間かかるだろうなって思ったから。冷めたら困るし」
「………………それは、どうもね。うん……でも、もう、出よう。逆上せちゃうよ」
「出たら、ちょっと横になるか?」
「……」

 言葉面だけなら気遣っているようだが、声の調子がよろしくない。行き先もよろしくない。無言でちょっと考える。腰を捻る半端な体勢も、湯のおかげで楽だった。いまいち頭は回らないが……だから、動きを止めたまま、目の前にある顔をぼうっとただ眺めていた時間はそれなりに長かったのだろう。見飽きることがないもんだから、ついつい感覚が狂ってしまう。ていうか顔が真っ赤だよ。君だって熱いんじゃないか。

「出たら、またベッド行くか?」
「うん……もうムリ」

 何で言い直した。
 伝わっていないって思ったのか、よりダイレクトに言い換えて無邪気に尋ねられたそれに「嫌だ」と言いかけて、もうその言葉が使えないんだって頭が代わりの言葉を弾き出す。何だかな。私って結構素直ないい子じゃないか。よくよく言うことを聞いている。

「洗濯、したいし」
「水洗いして、洗濯機回してる」
「……全部?」
「おう。シーツと、ベッドカバーと、一応、布団のとクッションのも」
「……すごい」
「一緒に洗濯したことあっただろ」

 そうだった。一緒にっていうか、この男は幼児のごとく後をついて回って、作業を見守っていただけだ。手伝いと呼べるものは物干し場のロープを張り直した程度だろう。いやすごく助かったけどさ。考えてみれば、彼はもうランドリールームの場所も、乾いたリネン類を仕舞う部屋も、何と私のタオルのたたみ方まで知っている。それを思うと何だか妙に可笑しくなって、我慢せずクツクツ笑う。君なんて、私の年も誕生日も、フルネームだって知らないくせに!
 湯を波打たせて身体を戻した。頭を凭せ掛けて深く背を預けて、ソファ扱いしても黙ってしっかり受け止めてくれる人間椅子。こっちは逆に上がってきたというのに、向こうはやっと異様なテンションが落ち着いたらしい。機嫌は治ったかと控えめに訊いてくる。別に怒っていたわけじゃない。自分が何を言ったか、どんな振る舞いをしたか、今更ながらに蘇って、整理がつかずに少し死にたくなっていただけだ。はっちゃけたのは私の方か。みっともないところを晒してしまった。そんなところ見せたくないって構えて、だから、緊張していたのかな。私はこの男に、私を少しでも良く見せたいんだろうか。それは、それこそ、恥ずかしい話だった。
 顔が熱い。頭が熱い。
 ああ、本当にそろそろ上がらないと。逆上せてしまう。分かっているのにどうにもやっぱり心地良くて、怠さと眠気に引きずり込まれる。目を閉じたらいけない。そう思ったのに閉じてしまった。

 仮に毎晩こんな夜を過ごしたとしても。明日失くしても大丈夫だなんて、そんなことが思える時はきっと来ない。ただ、後悔だけはしたくなかった。言っておけばよかった、やってあげればよかった、そんな後悔は馬鹿げている。
 機嫌は別に、ずっと悪くないよ。
 君が好き。
 もう上がろう。
 とりあえず今は、これだけ伝えておけば十分だ。ちゃんと全部告げて、だから安心してしまって、そこまでの記憶をとどめるまでが限界だったらしい。意識を手放していたと気付いた頃にはもう夜明けが近く、そうして、身体の下には健やかに眠る退治人がいた。










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