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仲良くなりたいならアプローチする。人でも猫でも同じ事だろう。

とりあえずおれはいつ出会っても差し出せるよう手土産を携えて、大学からの帰り道を殊更時間をかけて歩いた。(行きはさすがに難しい。朝は一分が一秒だ)
しかしあれから幾度となく駐車場を覗くも白靴下(仮名)の姿は見えず、奮発した缶詰はくたびれたワンショルダーバッグの中で虚しくプリントやファイルに埋もれていくばかりだった。

やはり飼い猫なのだろうか。
それともあの美貌だ。おれと同じように手元に置きたいと考える人がいてもおかしくない。いや可愛がられるのはいい事だ…それが白靴下の幸せなら…

諦めを自身に勧めながらも缶詰は捨てられず、よもやどこかで事故にでも遭ったのではと日々やきもきし、しかし多忙に押され帰りの時間は徐々に短縮されていく。
どうにもならない想いに焦燥感だけがいつも頭のどこかに貼り付いたまま、それでもやがて白靴下は来るべき学期末試験のプレッシャーに脳裏から押し流されていった。





犬は忠実で猫は気紛れというけれど、本当に猫は自由奔放だ。猫と獲物の分布数にもよるだろうが縄張り自体人間の移動距離に比べればそう広いものでもない。
なのに躍起になって探している内はちらとも見えず、こっちが身を引けばふらふらと姿を現す。
おまけに今は定期試験期間中で構いたくても構えない。
そんな時に限ってさあ見てってとばかりに細長い体を伸ばして黒っぽい猫が駐車場に転がっているのはどうしたわけだろう。
あ、腹側はやっぱり白いんだ…かわいい。

試験期間中も講義があるものはあるしレポートの締め切りはすぐ背後に控えている。今余分な時間なんておれには一切ないんだぞ…
……。
………。
いや、それにしてもやっぱり美人だ。目を閉じているときゅっと引き締まった口元が際立つ。そういえば目は何色だったろう。こないだは夕暮れ時に瞳孔が開き気味だったから、やたら黒目がちで虹彩の色までは認められなかった。メバリのしっかり入ったややきつめの目元を思い出す。


優美に日向ぼっこを愉しむ白靴下にふらふらと吸い寄せられ、気が付けばぴくぴくと震えるヒゲが視認できる辺りまで近付いていた。腹側は真っ白で見るからにふっかふか。この毛並みは手入れの賜物というよりは内から漲る生命力による輝きだな。野良というか野生の香りがする。
前足とおんなじで後ろ足の先も白い。かわいい。
しきりに耳を動かして警戒を怠らない白靴下は、足音に対し物憂げに薄く瞳を開け首を傾げるようにして此方を向く。おお、目は黄色っぽい緑だ。かわいい。

屈み込んでじりじり接近を図るおれを認識しておきながら白靴下は動かない。やっぱり人を怖がらないらしい。
今現在飼い猫なのか昔どこかで飼われていたのか、それともあちこちで餌を貰い慣れているのかもしれない。

今日び野良猫がやっていくためには容姿や愛嬌で秀でた面を持たねば辛かろう。そうでなければ生粋の野良として狩猟能力を磨き立てるか。
…こいつはどうも両刀使いの匂いがする。うん。益々好みだ。

白靴下などと間に合わせの呼び名じゃなくてきちんとした名前を付けてやりたい。格好よくって強そうでそれでいてかわいいのがいいな。あと呼びやすい感じ…動物病院の受付で呼ばれる時にも自然な感じ…



いやいやまだ飼えるって決まったわけじゃないし白靴下にも事情ってもんがあるだろうしそもそもまだ性別すら教えてもらってないし。とりあえず今日の所は挨拶だけして帰るとしよう。

バッグの底にはディスカウントショップのビニール袋に包まれたままの缶詰がある。取り出すため荷物を肩から下ろそうと動いた途端、白靴下が豹変した。



***



思いついた初期の構想は「人間辞めても離れない」みたいな壮絶な竹←←←くくという鬱ディープな感じでした
こうなったのは間違いなく竹谷視点のせい
全部独立した話で三本くらいで終われるかと思ってたのに
こうなったら三本では前フリが終わるくらいにしかならない

女子のごとく「かわいい」を連発するたけやんが可愛いと思いました
2010/06/23 22:18


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