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戦後、体制が何もかもひっくり返った中では久々知のような優等生は大いに惑うはずです。
割と保守的な男、久々知。
今まで至上と信じていたものが瓦解したとなると、もうどうすればいいのか分からない……与えられた知識をせっせと吸収するのは得意でも、変化に対応するのは苦手というあれです。
そんなお堅い秀才くんは、概念やら枠組みやらに全く頓着しない人物に心底度肝を抜かれるわけです。
そう、トリックスター鉢屋くん。

彼は戦争が激化し国中がピリピリする中でもれーせーに「竹槍訓練なんざアホくさ」って呟いて袋叩きに遭う系男子です。
世が世ならその慧眼を賞賛されてしかるべきなのに、そぐわない時代に生まれちまったばかりに酷い目に遭います。
成績優秀品行方正ゆえに一目置かれる存在の久々知は当然お国のために一直線、敗戦の可能性など掠めるだけで不敬だと頭から追い出しているようなタイプなので、彼らはお互いに「不謹慎な男」「けったくそわるい」と思っていて相性は最悪です。

が、戦後生き生きと活動し出す鉢屋に「何を信じればいいんだ」と腑抜け状態の久々知は頬を張られるに等しい衝撃を受けるのです。
こいつは一体何を拠り所に生きているのだろう……知りたくて近づく久々知。
対して、戦争が終わったというのに喜ぶどころかこの世の終わりと青垂れる久々知を憐れんだ鉢屋はむげにせず良くしてやるわけです。

仕事を斡旋してもらったり米を都合してもらったり律儀に礼をしに行ったりそしたら捕まって酒の相手をさせられたり、そんな触れ合いを重ねるにつれ、鉢屋が自分自身を信じて道を切り拓いていることに気付く久々知は、やがて、国ではなく自分のために生きることを目指して試行錯誤を始めるのでした。

それをちょっと嬉しげに見守る鉢屋……という妄想で満足しました。
寝ます。
2018/12/26 00:48


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