Blog | ナノ


いやああああああ。
まさか自分が触る前に触られるとは思わなかったあああ。

おれは確かに動物好きで特に毛皮ある生き物に大興奮するけれど、写真とかイラストとか、二次元に収まった動物に対しては特に何も思わない。ああ、可愛いねー、くらい。やっぱり生き物はナマで触れ合わなきゃな。
そしてうずくまっていたり眠っている姿よりはアクティブに動き回っている姿の方が生き物として輝いていると思うんだ。
ジャーマンシェパードが全速力で走る姿とかジンベエザメが泳ぐとことか、初めて見た時は感動したもん。


バッグを探ろうと立ち上がって手を動かした途端、それまで怠惰に寝そべっていた細長い毛皮がバネ仕掛けみたいに跳ね起きて足に絡み付いてきた。

間近で艶やかな毛がうねって、温かいようなひんやりしているような柔らかい不思議な感触を存分に味わおうと全神経が勝手に脛周辺に集中する…あああああ気持ちいいいぃなにこれええ。

勿論手も止まる。
と、催促なのか非難なのか、足下にうごうごと纏わり付きすっかり毛皮ウミウシ状態の白靴下が一声長く鳴いた。予想よりも随分落ち着いたハスキーな感じだった。でも何だろう…重厚な天然木のスピーカーで聴いた音みたいに、柔らかく耳に馴染む。
強請っている立場の癖に媚びるというよりはさっさとしろと言わんばかりの妙に居丈高な声音だったけど。

真っ直ぐにおれを見上げて再び鳴いた白靴下に、責められている気分になって慌てて缶詰を引っ張り出す。どうも第一印象通り強気な性格らしい。
ただ、餌の気配に釣られたと分かっていても態度は実に愛らしい…きらきらと薄い虹彩を光らせてじれたように絡み付く白靴下を見ていたおれの目は多分完全にやに下がっていた。



あっさりと人前に食事風景を晒す所は野良らしからぬ気の許しようだが、危害を加えられる恐れがないと早々に悟ったからかもしれないし、これは期待が持てそうな気がする。飼い猫ならば定期的な餌の供給がある筈だからここまで必死にはならないだろう。
縁に付着した分まで綺麗に舌でこそげられた空き缶をビニール袋に戻して、ものの数分で食事を終え今は塀の上で優雅に毛繕いしている白靴下を見遣った。

腹が膨れれば用はなしとばかりにさっさと間合いをとられてしまったが、やっと接触できた上にふかふかの毛皮に触れられたのだ。
餌に夢中な間はじっくりと毛並みとか模様とかピクピク忙しなく動く耳とか時々鼻をぺろりと舐めるピンク色の舌とかをじっくり鑑賞できたし、収穫としては十二分。
ま、暫くは顔を覚えてもらうためにも様子見といくか。

大学周辺は昼間でも静かな住宅街で、人気がない。おれは袋をぐるぐる振り回しながら口笛を吹き吹き帰路についた。



***



竹谷と久々知の必要性とか一次じゃないのかとか需要とか疑問は置いといてとりあえず終着点まで行ってみようと思いました
2010/06/26 23:25


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -