恋色もも色リトマス試験紙

「……」

「……」

ジッと見つめられクロエはジッと見上げた。
すぅと空気を吸い込めば湿った土の匂いに微かに残る弾薬の匂い。
ジャングルでの作戦を想定して作られたこの模擬戦場の次のブロックは足場の悪い森林だった。
尻餅をついたクロエへと向かってピアーズが溜息をついて片手を差し出す。

「立てます?」

「は、はい」

申し訳なさそうに眉根を下げ、クロエはピアーズの手をとった。
引っ張り上げられ、恥ずかしそうにクロエは俯いた。
連続する木の根っこに自分から「気を付けてくださいね」なんてピアーズに言っておいて張り切って銃を構えて進めば躓いてこのザマだ。
認められたい。その一心で進めば空回って馬鹿な失敗をしてしまう。

「ピアーズさん、ごめんなさ――」

顔を上げれば、プッと笑われ、クロエは困惑する。
口元を抑え目元を細めて笑うピアーズに「な、何ですか」と身構える。
クックッと小刻みに笑うピアーズに何か笑うようなことしただろうかと本気で考え始める。

「頭にタンポポが生えますよ」

「え!タンポポですか!?」

指摘され、ふるふると頭を振ればふわふわと白い綿毛が頭から落ちてきた。
風に流されていく綿毛にホッと息をつけば、まだ聞こえる忍び笑い。

「look like a dog」
[ワンちゃんみたいだ]

「a dog…!?」
[わ、ワンちゃん!?]

「普通、手で取らないか?」

「でも頭振った方が効率よく取れるかと思って」

「大雑把なルーキーだな。隊長とよく似てるよ」

それって女子力ないって言われているみたい。
ガーンとショックを受けているとピアーズはふっと微笑を浮かべてクロエの髪に触れた。

「だから放っておけないんですね、きっと」

くすりと笑い、残った綿毛を取ってくれる。
ドキドキとその間、心拍数が上がったのは内緒だ。




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