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★ What do you want is

【高校生と高校生】


 最近すっかり寒くなって、夜はこごえそうなほどつめたい。
 だけど二人寄り添っていれば、触れる場所から心まで、じんわり温まってきた。


「泉」


 真っ暗い夜へ溶かすように、大好きな声はあまくあまく耳におちる。髪を梳いてくれるのが心地よくて目を閉じたまま夢の世界へ向かって歩いているところを、そんな愛しい声に呼びとめられた。
 うすく目を開けると、優しい恋人がいた。うつうつと眠たい俺を子どもでも見るような目をして見ていて、その灰色の丸い瞳はどこまでも至高の愛で俺をあまやかしてくれるんだ。

 うれしいのと、大好きな気持ちとで、夢のあいだをうつらうつらとする俺に、それはひとつだけ訊いてきた。


「たんじょうび。なに欲しい?」


 聞いていてもいなくても、それは関係なかったに違いない。耳に唇よせて囁くそれは、ふたりがふざけてよくするいたずらだから。
 俺はとてもくすぐったくって身をちぢめて、それから小さく答えてやった。


「こうしてたい。」


 額をこすりつけた胸はとても温かくて、鼻で息をすると洗剤とこの部屋の匂いの、恋人の匂いがした。もうなじみ深くて、けれど中学校の頃とはすこしだけ違うそれ。
 大好きだからこうしてたい。夢と現のはざまでとろとろとして、大好きなひとに愛されながら眠りたい。

 欲しいものは永遠にずっとこの思いだけ。約束出来ないものだからこそ、大切なそれ。いつのときもとめどなく移り変わるそれ。
 くれるとしたら、確かなこのてのひらだけ。俺を連れて、どこでもいっしょに行ってくれる広いてのひら。


「欲しいもの。くれよ。ちゃんと」

「なんでもやるよ。泉が欲しいものはちゃんと今まで、なんでもあげてるだろ。」

「そうか」


 てのひらが頬を撫でる。心地よくて再び目を閉じる。
 そうか欲しいものはなんだってこのてのひらの中だ。大好きなてのひらがなんでもこの手に入れてくれる。
 大好きなひとの、てのひらだ。

 ふつんとスイッチが切れて夢に跳ぶ。ふわふわふわふわ、風船に乗って空に行く。
 またひとつ年をとるなら、そのときはいちばんに新しい俺を見て欲しいから、いちばん近い場所にいて。
 その腕の中は、生まれた季節でいちばん心地よい温度。


―― Danke, maine liebe.

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