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花たちの季節


春の桜はうらら

薄紅色の花吹雪が雪のごとくちらちら、開け放した窓から光の一片を纏いひらりとこぼれ落ちてくる。

風はまだ少し冷たい。



「…は……」

「泉、ちゃんと汗の処理しないと風邪ひくぞ。」

「ん…」



窓から差し込むうららの春

空は霞むが少し青く

冬は去ったのだと思わせる色

同じ色をした見えぬ風は

昼間から淫行に耽る体を撫でていく。


今日は膜があったから体に白濁は無い

汚れなくて便利と思うが

膜は邪魔といつも思う。

彼との壁を隔てないでといつも思う。

いつだって彼に触れていたい。







見つめる虚空から

光のつぶて、桜のひとひら。








「いっぱい入ってくる。」

「すぐそこ桜の木があるからなあ。片付け考えると憂鬱だけど、見てる分にはまあ、きれいだよな。」

「ん……」



桜の花のひとひらが

目覚めを知らない眠りを乗せてこぼれる

ひとひらふたひら

俺は春に埋もれるやもしれない。



「泉、寝ちゃだめだって。」

「…じゃあもっかい、しよ。じゃなきゃおまえキレイにしてくれよ、おれ眠い」

「えー、わがままだなそれー!」



ひとひら指が肌に触れ

ふたひら唇に唇。

笑って、なれ合う様はさざめく桜に遊ぶ陽気な光のよう。


春はうつらと淫行の季節

体まで春めいて、終わりを知らぬは春眠暁を知らぬがごとく

薄くれないの花を体にください



「イヌネコみたいな。盛りがついて。」

「それで構わねぇよ。だって好きだろ、エロい事。」



桃色の春

でも、おれにかぶさるあなたの色のほうが、なにより強くてきれいな色。




―― i want to bloom, too!

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