Category:浜田と泉
2013 22nd Dec.
★ あなたのためなら何だって
【高校生と高校生】
男を夢中にさせる方法とは、一体どんなものだろう。
相手を惹き付けてやまないような、そんな魔法のようなもの。
「何。」
「あ、いや? …なんか、珍しいな、って。」
戸惑うような、照れるような声ののちに、ヒーターが息を吐くのを弱める音。
もとの半分ほどに落ちたその音を聞いてから、泉は額をくっ付けていた肩から顔を上げて浜田を見た。
やはり、戸惑うような、照れているような顔だ。身長の差があるので泉からは見上げるようになるが、彼には威圧感なんてものが感じられない。体格も良いには良いが、それは顔の造りのせいだ。
わりに大きいつり目とそれに沿った眉、また表情をはっきり見せる大きなくちが彼を人懐こいように見せている。
たまに、犬のようだなあと思う。例えるならゴールデンレトリバーだろうか。性格が優しいと言われるのはラブラドールだったかゴールデンだったかと考えながらも、泉の頭はずっと打算的に動いていた。
泉がしなだれかかっているのは右の肩。浜田の右腕と泉の左腕は触れているわけで、その先のブランケットに隠した手と手は恋人繋ぎと言われる結び目を作っていた。
最初に相手に触れたのは泉。つけたバラエティ番組になんて始めから興味はない。
なのにそっちへ関心を向ける振りをして、浜田が黙って自分に倣うのを知りながらしばらく放置してやる。
これは駆け引きというやつだ。
浜田の方から触れようとするのを、泉は大抵つっぱねる。反対に泉から触れようとするのはほんの稀。だから、効果があるのだ。
ほんとうは触れられたいし、三倍くらいは触れてみたい。だけどそれじゃあ効果がない。
それじゃあ駆け引きにならないのだ。
「あ、ちょ、」
「したくねえの。」
自分が見つめている限りは浜田は目をそらせないのを知っていて、泉はほんの十センチ程度の距離から浜田を見つめながら、結び目を自分の方へ引き寄せる。
それを解いて布の上から自分に触れさせると、浜田はいっそううろたえた。
したくないのかと囁けばそういうわけじゃないと答えるが、言い訳をする口なんかよりも体が一番素直なのだ。
触れさせた彼の手に自分の手を重ねて愛撫を促し、鼻にかけた声のひとつも出してやれば、半開きの唇にキスが降ってくる。
柔らかい唇。熱い唇。それをくれて、早くとろかして欲しい。
いつだって触れていたいし、愛して欲しいけれど、泉にそれは出来なかった。
だって、そんなんじゃきっとすぐに飽きられてしまう。
大好きな浜田をより長く繋ぎ止めて置くために、不馴れな駆け引きなんかしているのだ。
ずっと一緒にいたい。死ぬまでそばに置いて欲しい。そのためなら自分を抑えるくらい何でもない。
けれど、かわいそうだなと思う。
自分が腕を離さない限り、浜田は人並みに結婚も出来やしない。人並みのしあわせを奪っているのは自分。彼のそれなりの未来を奪っているのは自分だ。
わかっていても、離したくない。
浜田が離れたいというなら、いっそう殺してくれないだろうか。そうしたら彼はずっと自分に囚われることになる。
どんな手を使っても、離したくない。
その思いは黒く黒く燃えるようで、やがて彼まで燃やしてしまうんだろうなと思った。
―― my coke fire.
一年365題より
12/22「どんな卑怯な手を使っても」
べつに卑怯ではない気が。
あとこんな打算的な子でもないと思います泉さんは。もっとぶきっちょさんだと思います。
うちの泉さんはよくヤンデレ化します。すみません。
そろそろらぶらぶなのやりたいです。
← →