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2014 26th Jan.
□ はまださんのおへや
ぷにぷにのくにのぷにぷにのまちで、くろうさぎのイズミちゃんは、はまださんのおひざの上でおひるねしていました。
まどのそとは雨がしとしとふっていて、すこしさむいです。
でもイズミちゃんのふかふかのブランケットはあったかかったし、はまださんのおひざはしあわせだったので、イズミちゃんはきもちよくおひるねしていました。
イズミちゃんのねいきと雨のおとを聴きながら、はまださんはしばらく、なにかちくちくと作業していましたが、おわった!とさけんでイズミちゃんをおこしました。
「イズミちゃん、おでかけするよ。おきて。」
「おでかけ…?」
はまださんは、ねぼけたイズミちゃんの、よだれまみれでがびがびのくちもとをきれいにふいてあげて、にもつをふたつ持つと、おでかけするよといいました。
ていけつあつのイズミちゃんがぼんやりしているすきに、はまださんは、そらいろのうさみみレインコートをイズミちゃんに着せて、おんなじいろのながぐつをはかせました。
そうしてじぶんのおっきなかさをかすと、イズミちゃんをおんぶして、にもつをふたつ持って、あめのまちへ出てゆきました。
□ あめのひのおさんぽ
はまださんのせなかにおんぶされているうちに、イズミちゃんは目がさめて、はまださんとお手てをつないであるきました。
まえに、うしろに、ぎゅっとつないだお手てをゆらして、あめでぬれた道を歩いてゆきます。
イズミちゃんは、はれの日のおさんぽもすきでしたが、あめの日も大すきでした。
あめがふると、水たまりができるし、お花や木がげんきになるし、かえるやかたつむりも出てきて、とってもにぎやかだからです。
イズミちゃんとはまださんが、雨のおうたをぴちぴちじゃぶじゃぶうたっているうちに、ふたりはぶちょうのおうちにつきました。
□ ぶちょうのおうち
「ごめんくださいな。」
「ごめんくださーい。」
「はい、はい。」
はまださんにだっこしてもらって、イズミちゃんがぴんぽんをおすと、すぐにぶちょうがあらわれました。
そのすぐあとに、カエルのパジャマを着たたじまさまがやってきて、おでむかえしてくれました。
「イズミだー!」
「よー、たじま。」
「わざわざすみません、はまださん。」
「いーのいーの、引きこもってると、運動不足になっちゃってねえ。」
イズミちゃんとたじまさまがハイタッチをしたその上で、はまださんとぶちょうがおとなのあいさつをしています。
さいきん雨がふって運動不足にはくしゃがかかっているはまださんが、おへやから持ってきたにもつをひとつ、ぶちょうにわたしました。
カエルのシールがついている包みです。
「はない、なになに、それ!」
「おまえの夏パジャマだよ。はまださんがつくってくれたんだ。」
おれいは?とぶちょうにいわれて、たじまさまがありがとう!といいました。
「どういたしまして。じゃあ、ありがとうが言えるいいこのたじまには、ドーナツをあげよう!」
「きゃー!!ドーナツ!!」
花よりだんごのたじまさまは、ちゃいろい紙ぶくろをかかげて大よろこびです。
「あ、そんでね。夏ふくはノースリーブと七分丈です。モチーフはひきつづきカエルで、汗いっぱいかいていいようにノースリーブはタオル地、七分をガーゼにしました。」
「いつもありがとうございます。梅雨があけたらおろしますね。あとこれ、すくないですけどたじまんちの野菜です。」
ぶちょうが包みをあけると、きれいなみどりいろときみどりいろのふくが二まいでてきました。
ドーナツからあたらしいパジャマにきょうみをうつしたたじまさまが、またちょこちょこしはじめたので、ぶちょうは包みをわたすといったんおくに引っこみました。
もどってきたぶちょうは、やさいのいっぱいはいったビニールぶくろを持っていました。
「わ、ありがとう!たじまんちのやさいはおいしいから、うれしいね。」
「おれ、たじまんちのトマトすきだぜ。」
「えへへー。」
パジャマの包みといっぱいのやさいをこうかんして、イズミちゃんとはまださんは、ぶちょうとたじまにさよならしました。
はまださんがあるきながら、ばんごはんはトマトサラダとあったかいシチューにしようね、といったので、イズミちゃんはきゅうにおなかがすきました。
□ あべくんち
またしばらくあるくと、こんどはおっきなおうちにつきました。
イズミちゃんがぽんぽんにふくれたアジサイの花とかたつむりに気をとられているうちに、はまださんにぴんぽんをおされてしまいました。
「はい、あべ、おとどけもの。」
「おー。とりあえずあがれば。」
「あ、イ、イズミちゃんだ。」
「よーみはし。ドーナツあるよ。たべるか。」
「たべる!」
ドアがひらくと、たれめのあべくんとみはしがむかえてくれました。
みはしのちゃいろいかみのけは、あめがふってもふわふわで、ぺっちゃんこになってしまうイズミちゃんは、いいなあとおもいました。
あがれば、とあべくんがいったので、おことばにあまえさせてもらうと、あったかいココアとはまださんのドーナツがお茶うけになって、でてきました。
イズミちゃんとみはしがもぐもぐしているよこで、はまださんがあべくんに、包みをわたしました。
ひつじのシールがついた包みです。
「夏パジャマです。」
「いつもわりーな。」
「みはしのは、はんそでと七分丈ね。かぜひくといけないから、ちょっともこもこしつつもさらさらのパイル地を使用しました。したに着るTシャツでちょうせいしたげてね。」
「おう。…みはし、ちょっと着てみろ。」
「もぐもぐもぐもぐ。」
「おいこら。」
おやつにむちゅうのみはしのおくちが、おさとうのこなでたいへんだったので、あべくんがおしぼりでムリクリふいてあげました。
お手てもおくちもきれいにしてもらったみはしが、あたらしいパジャマに着がえてみました。
「こ、こんなかんじ。」
「まじもえ。かぼちゃぱんつもえ。」
「あべ、きんもーい。」
「サイズもちょうどいいねー。」
みはしのパジャマは、クリームいろのひつじです。
てくびが出るくらいのすそはひろがっていて、かたのところから二本、コーヒーいろのラインがはいっています。
なつだから、スポーティーにしたの。でもかぼちゃぱんつでかわいさもわすれない、こだわりの一品なの。とはまださんがむねをはると、あべくんが、いいしごとしてますねえとたれめをきらきらさせました。
「みはし、もこもこ、いいなー。」
「え。えへへ。」
「えへへへへ」
「あべ、きんもーい。」
あべくんたちからはおれいに、布をもらいました。
「じかいさく、きたいしてる。」
「まかせとけ。」
おおきいふたりがあやしくわらうので、イズミちゃんとみはしは、ふたりのぶんのドーナツとココアもいただいてしまいました。
□ はまださんのおへや
「なあ。おれのパジャマは、ないの。」
おへやにもどると、イズミちゃんははまださんに、そうたずねました。
はまださんはイズミちゃんのために、あまいホットミルクをつくってあげていましたが、それをきいてにっこりわらっていいました。
「あるよ!イズミちゃんのは、これだよ。」
「わあ!」
はまださんはイズミちゃんの前にカップをおくと、おへやのクッションのかげから、あのちゃいろの包みを取りだしました。
包みには、くろいうさぎのシールがついています。
「あけてみて。」
「ん、しょ。よいしょ。」
イズミちゃんは包みをきれいにとこうとしましたが、なかなかうまくできません。
なんとかあけた、ぼろぼろの包みからは、イズミちゃんのあたらしいパジャマが二まい、でてきました!
「あ、まっくろうさぎ!と、そらいろうさぎ!」
「うん。イズミちゃん、着てみて!」
イズミちゃんのパジャマは、ながいみみとまんまるのしっぽのついた、うさぎです。
くろいほうはジッパーにそってピンクのふちどりがしてあって、そらいろはいろちがいでしろいふちどりがしてあります。
「かわいい!」
「う。」
「やっぱりかわいー!…うん。イズミちゃんがいっちばん、かわいいよ!」
「うぅ〜っ」
なつのまっくろうさぎにきがえて、ちょこんと立ったイズミちゃんを、はまださんがぎゅっとしてくれました。
でもイズミちゃんは、大すきなはまださんがよろこんでくれるのがあんまりうれしくって、かおをまっかにしていました。
「…でもイズミちゃん、きょうはすこしまださむいから、ながそで着ようか?」
「いい。これがいいの。」
「だって、かぜひいちゃうよ。」
「いい。はまだがぎゅってしててくれたら、あったかいから。」
はまださんにぴったりくっついたイズミちゃんは、そういいました。
こんどははまださんがまっかになってしまいました。
「し、しかたないなあ。」
「はまだ、おれおなかすいた。ごはんつくれ。」
イズミちゃんのてれかくしなのか、またはてんねんなのかはわかりませんが、はまださんはイズミちゃんのいうように、ごはんのじゅんびにとりかかりました。
おそとでは、まだあめがしとしとふっています。
でもあしたからはおひさまがひさしぶりに出てきてくれるらしいので、きっとたじまさまとみはしのパジャマは、あしたからだいかつやくするでしょう。
まっくろうさぎのイズミちゃんは、みんなとは一日はやくて、きょうからなつもよう。
イズミちゃんもきょうはがんばって、はまださんのとなりでサラダのおてつだいです。
――― i like these days.
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