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2014 7th Nov.

★ ライクアクリスタル
【高校生と高校生】



 既に今日という日は沈みかけて藍色。
 三六○度の町の空は半球をして、そのほとんどは夜の色をしているが、端の端のたった一部分だけまだオレンジ色に燃えている。
 雲を下から照らす赤いオレンジは上へゆく程色を薄めて黄の色から白へ、蒼白からゆっくりと藍の色へ変わってゆく。

 見ていると、蒼白が裾野へ引かれるように沈んでゆくのがよくわかる。そうしてやがて、空はいよいよ夜になった。

 大気はもう寒い。息こそまだ白くならないが、そんなのはもうすぐだ。
 瞬きをすると冬に変わる。季節はもう、秋の暮れになっていた。

 この季節は、いつだって寂しい。
 あまり好きじゃないオレは、苦しくなって隣りに立つ君へ声を掛ける。


「もう秋も終わるなあ。泉。」

「まだ十一月になったばっかじゃねえか。そういうの、じじくせえぞ。」

「何、おまえあともう何日かでオレと同い年だろ?」

「半月だけな。」


 暗い暗い藍の下で君の声を聞いたら、急に星が光りだしたよ。
 陰鬱な気分のオレと違って、君の声は明るい。理由はもう少しで今よりまたひとつおとなになるからだ。
 君にとっちゃオレと肩を並べられる、短い季節。ああでもそれなら、同い年なら、少し君に甘えたって良いかな。


「でもさ、泉」

「何だよ。」

「やっぱり、寒いよ。」


 これ見よがしに、肩を竦めて震えてみせる。学ランの下へ着たセーターや少し厚手のブルゾンなんかじゃ、やっぱり今夜は冷えるのだ。
 丸くて大きな月や星はよく見えるけど、透き通った空気はよくよく冷えている。
 肩を竦め、ね、と笑ったら、君ったらこんなこと言うんだよな。


「まあな。確かに寒いけど。」


 そう息ついてポケットから左手を出し、オレの右手を拐って、そして。


「こうすりゃここだけは、寒くねえだろ。」


 オレの肩くらいのところでさ、とびきりかわいく笑うんだもの。オレは堪らなくなって、少し泣きそうになった。


「……ああでも、やっぱ冷えたかもな。コンビニではちみつレモンでも買っておまえんち帰るか。」

「そりゃあいいけど、この手は繋いだまんまでいてくれる?」

「……じゃあはちみつレモンは帰ってからおまえが作れよ!」

「はい喜んで!」


 秋が暮れてゆく夜空の下は、でもその寒さのお陰で人は出歩いちゃいなかった。
 寂しくて寒い冬なんかこれまで好きじゃなかったけど、君がそのかわいい顔で笑うくらいすてきなことがあるからさ、今じゃ少しだけ、冬が好きだって思えるんだ。


―― It seems clearly.

浜田さんは、ときどきちょっと甘えん坊さんだといいなと思ってます。
それを泉はきっと男前に包んでくれるんじゃないでしょうか。


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